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岸井成格の「TPPに入らないっていう選択肢はもうない」
昨日(3/17)、TBSのサンデーモーニングでTPPが取り上げられ、金子勝が出演して解説を加えていた。(1)日本が参加してもルール作りに関与する時間はなく、唯一、コメを例外品目として勝ち取れるかどうかだ、(2)米韓FTAによって60本以上の韓国の国内法が改定を強いられたが、金融、知財、社会保障、食品安全基準など、米国のルールが日本に押しつけられる、(3)ISD条項によって日本政府が米国企業に訴えられ、多額の賠償金を取られる。過不足ない説明で、当を得た指摘だったが、それに対して岸井成格が賛成論を猛然とまくしたて、「TPPに参加しないっていう選択肢はもうないと思う」と言い、幸田真音がそれにだめ押しし、議論は打ち止めになった。TPP参加に反対論を唱えたのは、5人のコメンテーターの中で金子勝だけだった。予想したとおり、マスコミは3/15の安倍晋三のTPP参加表明に対する世論調査の結果を3/17の夕刻から流し始め、朝日の記事では、安倍晋三による参加表明を「評価する」が71%、日本のTPP参加に「賛成」が53%の数字が出ている。「反対」は23%。毎日の記事では、「支持する」が63%、安倍内閣の支持率が70%となった。この世論調査の数字が最初にあって、岸井成格のコメントが発されている。きわめて不可解な現実ながら、TPPについては、その危険な中身がどれほど詳しく訴えられ、公論として広まっても、支持の世論ばかりが大きくなっていく。


サンデーモーニングに登場したフリップに、TPPに参加した場合の懸念と不参加の場合の懸念の二つが表にして示されていた。前者は4点で、(1)食料自給率の低下、(2)農地の荒廃と担い手の減少、(3)遺伝子組み換え食品などの規制緩和、(4)国民皆保険制度が損なわれる。後者は2点で、(1)アジア太平洋地域の成長を十分に取り込むことができず、国際社会での地位を保てなくなる、(2)この地域の政治的・経済的リーダーシップの低下につながる、と書かれている。TPPについてのマスコミ報道はいつもこんな感じだ。TPPに不参加の場合のデメリットを、そのときそのとき無理やりこじつける。金子勝も反論していたが、アジア太平洋地域の成長を取り込むと言うのなら、インドネシアや中国やインドを含めた経済圏が構想されないといけない。米国が主導し、豪州やNZやカナダがメンバーの経済圏に入っても、成長を取り込むことにはならない。ASEAN10か国と中国とインドが入るRCEP(東アジア地域包括的経済連携)の方が、TPPと較べてはるかに域内経済の成長率が高く、そしてルールの拘束が緩くて有利であることは、誰もにとって常識であり、金子勝が指摘したとおりだ。インドネシアはTPPに不参加の姿勢を続けている。つまり、この不参加のデメリットの(1)は嘘だ。(2)も意味不明で、TPPのリーダーシップを執るのは米国であって、日本には最初からリーダーシップの余地はない。

このような具合に、TPP参加のメリットが言われるときは、全く意味のない抽象論が並べられ、レトリックにもならない言葉がその場凌ぎで繰り出され、TPP参加の正当性が強調される。2010年は「平成の開国」、2011年は「バスに乗り遅れる」だった。常に中身がない。デメリットだけでメリットがないものを、強引にマスコミが必要性を強調し、有無を言わせず「賛成多数」の世論に塗り固め、亡国と破滅の政治決定を通してしまう。同じ場面を何度もテレビで見させられ、見慣れて見飽きた情景となり、抵抗する意欲すら萎えてしまったが、TPP参加の必要性について、合理的で納得的な理由を聞いた覚えは一度もない。海外から安い輸入品が入って消費が増えるというのも嘘だ。日本は貿易では世界で最も開かれた国で、工業製品については関税ゼロの国である。関税をかけているのは一部の農産物にすぎず、まさか、残留農薬とカビ毒の安い米国産米をそれほど食べたいのだろうか。遺伝子組み替えとポストハーベストのふりかけがかかった安い農産物をそれほど消費したいと言うのだろうか。思考停止と言えばそれまでだが、3年間もTPPの情報に接しながら、マスコミの言うがままに平然と賛成派に立つ者たちの気が知れない。こうして、安倍晋三のTPP参加表明に対して世論の多数支持が明確になった以上、例の3本目の矢の「成長戦略」で農地法を改定して農協を解体し、株式会社経営にシフトすることも、難なく遂行されるだろう。

北海道新聞の3/16の記事では、TPPによる道内への影響が2兆円に上るという道による試算が紹介されている。コメ、小麦、ビート、でんぷん原料用ジャガイモ、酪農(バターなどの乳製品)、牛肉、豚肉の計7品目で6180億円減少、でんぷん工場や精糖工場など7品目の関連産業への波及が5215億円、商店や金融など地域経済への影響が9859億円、17万3千人が失業し、3万3千戸の農家が消える。今回の決定は、日本農業の切り捨てであると同時に、北海道経済の切り捨てでもある。報道では、JA北海道中央会が今夏の参院選での自民党への不支持を表明、「関税撤廃品目の条件闘争には応じない姿勢を確認した」とある。また、「農業界だけの反対活動には限界があるため、今後は広い分野と連携し、道民の理解を得られるよう運動方針を見直す」ともある。この言葉が本当であることを信じたいし、反対運動が広がって成功することを祈りたい。今、北海道の農業関係者は蒼白だろう。TPPが問題になって3年になる。この間、最も強くTPPに抵抗し、反対運動の主力を担ってきたのは農協だ。しかし、農業関係以外に提携を広げ、反対運動を国民運動化することはできなかった。JA全中が本気だったかどうかも検証が必要かもしれない。今回、農水省は早々と白旗を上げ、農協と農家へのエクスキューズで補償金を取ることに専念した恰好で、これまでの食料自給率や農家戸別補償の政策を棄ててしまった。結局、人が出現しなかった。反TPPの救世主の降臨がなかった。

どうして過半数の、6割の人間がTPPに賛成なのだろうと不思議に思う。しかし、単にマスコミがTPP賛成にシフトしているだけでなく、よく見れば、この国の昨年までの二大政党であった自民党と民主党がTPPに賛成という政治の現実があり、第三党と第四党である維新とみんなの党が賛成という現実がある。不思議を言い出せば、みんなの党などというネオリベ原理主義だけが取り得の政党が、何であれほど得票するのかということがある。さらに脱線して不思議を付け加えれば、その党の政調会長代理の妻がTPPに絡んでやっていることである。冗談としか思えない。誰も言わないが、その党と谷岡郁子のみどりの風の関係も摩訶不思議で、これほど汚い政治の図はない。TPPに反対なのは、小沢一郎の勢力と共産党と社民党だけだ。この国に反TPPのまともな政治勢力がない。労組(連合)まで賛成している。JAが裏切ったとかどうとかという話があるが、私がJA全中の幹部の立場でも、昨年の衆院選は自民党支持で動いただろう。他にどうしようもない。臍を噛みながら、自民党と条件闘争を展開するしか身の置きどころがなく、その選択をするしか組合員である農家を守る方法がない。従来の方針を転換して自民党支持をやめ、民主党の農家戸別補償と中山間地の農業政策に賭け、2007年と2009年の選挙で民主党を勝たせたのに、呆気なく裏切られてしまった。JA全中が傘下の農家に対して責任をとる判断は、3兆円と計算された潰滅・廃業分を、何とか農水族と農水省から補助金として予算を取るという策以外にないだろう。

堤未果とかみどりの風の愚劣と欺瞞の中にTPPの政治がある。脱力させられる。


by thessalonike5 | 2013-03-18 23:30 | Trackback | Comments(0)
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