純粋彫刻論:県の誇り出版 「平八遺稿集」の復刻本 彫刻の起源など論考「人となり知って」 /三重
毎日新聞 2012年09月19日 地方版
近代彫刻史に足跡を残し、早世した伊勢市出身の彫刻家、橋本平八(1897〜1935年)の遺稿集として、弟で詩人、北園克衛(1902〜78年)が編集した「純粋彫刻論」を、伊勢市の出版社「伊勢文化舎」と、県立美術館の毛利伊知郎副館長、県印刷工業組合が70年ぶりに復刻、10月に刊行する。
橋本は、伊勢市朝熊町生まれ。19年に上京、日本美術院同人の佐藤朝山に師事して日本美術展に入選。7年で帰郷した後も出品を続けたが、38歳で亡くなった。昭和初期に発表した木彫の「花園に遊ぶ天女」「幼児表情」など、独自の精神性が盛り込まれた個性豊かな彫刻が残る。
遺稿集は、橋本の死後7年を経て、北園克衛が編集し、42年に昭森社(東京都)が出版したが、自費出版で部数が少なく、現在は入手困難になっている。
10年に県立美術館で橋本と北園兄弟の企画展を開催したのをきっかけに遺稿集復刻の話が持ち上がった。昨年秋ごろから、伊勢文化舎と、毛利副館長、県印刷工業組合の若手経営者ら約20人が企画。出来る限り忠実に再現するため、見た目、質感、紙の厚みなどを徹底的に研究して作業に取り組んだ。
復刻本は、「彫刻の起源」「純粋彫刻論」「思索」「原始精神の文明」の論考と、33年8月以降から亡くなるまでの橋本の日記の抜粋に分かれている。図版や作品の写真も掲載、毛利副館長の解説文を追加した。原本は紙の酸化が激しいため、全頁と写真は、原本と同じ資料からスキャニング。見返しは4パターン存在するため、復刻本も同様に4種類製作した。
伊勢文化舎の中村賢一代表は「古い技術や北園のこだわりが詰まった遺稿集。橋本の偉大さと人となりを知ってほしい」と話している。
B6判、344ページで和紙の張り箱入り。500部発行で、4200円。伊勢市内の書店と、県立美術館で販売。同社で予約を受け付けている。問い合わせは同社(0599・23・5166)。【木村文彦】
〔三重版〕