自転車:車減らし専用レーンを…3人乗り転倒、女児死亡
毎日新聞 2013年03月17日 23時02分(最終更新 03月18日 10時43分)
川崎市幸区で2月、歩道を走っていた母子3人乗り自転車が転倒し、車道に投げ出された5歳女児がトラックにひかれて死亡した。自転車の転倒を防ぐ手立てはなかったのか。自転車政策に詳しい東京工業大大学院の鈴木美緒(みお)助教(35)と現場を歩きながら考えた。【馬場直子】
「事故が起きても不思議のない場所」。2月中旬の夕方、現場を見た鈴木助教の指摘は厳しかった。
事故は2月4日午前7時35分ごろ、幸区塚越3の市道で起きた。前後に2人の娘を乗せて電動自転車で歩道を走っていた同区の会社員女性(36)が、正面から来た自転車を避けようとしてバランスを崩し転倒。後部席の長女が、JR南武線の踏切渋滞で停車中のトラックの下に投げ出され、動き出した後輪にひかれ亡くなった。
現場周辺の歩道幅は1.35メートルで、自転車はすれ違うのがやっと。所々電柱があり、幅は70センチに狭まる。それでも歩道を走る自転車が目立ち、前から来た人をやり過ごそうと、止まって待つ人も多い。
歩道は車道より少し高いが、車が沿道の駐車場などに入るため約3メートルおきに車道と同じ高さになりアップダウンが生じている。鈴木助教は「自転車走行に向いていない。ましてや子供2人を乗せた自転車は厳しい」とみる。そもそも神奈川県警は「自転車通行可」の指定をしておらず、自転車は本来、13歳未満や70歳以上、安全確保にやむを得ない場合でなければ、この歩道を通行できない。
一方、車道は片側1車線で、乗用車からバス、大型トラックにショベルカーと通過する車は多様で交通量も多いが、近くに踏切があるため速度は遅い。「おそらく時速30キロ、流れても40キロ未満」と鈴木助教。ここを通る自転車は、むしろ車道走行が向いていると指摘し「路肩に自転車レーンや自転車走行指導帯(自転車が走る場所を示す表示)をつくれば車道走行に変える人も出てくる」と語った。
実際、路肩を走る自転車もちらほら。大型トラックの真ん前を走行する自転車もいた。踏切手前のせいか、車と自転車の速度はほぼ同じ。事故防止の改善策としては、自転車の車道走行を増やし、すれ違いを減らすことが考えられる。
ただ、現場は幹線道路の抜け道のようだ。鈴木助教は自転車が車道を走りやすいよう、幹線道路の渋滞を解消し現場を通る車を減らすことも必要とみる。