ドキュメントにっぽんの絆:3・11それから 岩手・陸前高田 被災「そば屋」の2年
毎日新聞 2013年03月17日 東京朝刊
震災当時、長女は4歳、長男は3歳。被災時の記憶はほとんどなく、地震が来れば仮設住宅ではしゃいでいる。でも、津波が何を奪ったのかは知っていてほしい。寝かしつける夜には、津波に耐えた「奇跡の一本松」の絵本を読み聞かせる。
原稿は、ずっと親に甘えてきた3代目の自分が、店の看板を背負う覚悟をしたところまでしか書けなかった。
マイクの前でしばらく話すと、文面は途切れた。不思議と言葉が続いた。卒業後、多くが古里を離れる後輩たちに伝えたかった。
<よかったらまた高田に帰ってきてほしいです。立派な堤防や建物ができても、そこに住む人がいないと町じゃないと思うんです。立派なことができる人はやってほしいし、ふつうに結婚して仕事をする人がいてもいい。その集まりが町だと思う。一緒になって復興できればと思います>
講演翌日も昼時に客が席待ちの列をつくってくれた。春には長女が小学校に入る。きっと、そんな一つ一つが町のあしたにつながる。そう信じている。【竹内良和】
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