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【千葉】共に生きる 3.11から2年 傾きは直したが… 液状化被害その後
液状化で傾いた家は何とか直したが、また地震が来れば…。浦安市舞浜三丁目の住民は、こんな不安を抱えたままでいる。再液状化に備え、道路部分と住宅地の一体的な地盤対策は検討されている。だが、浦安市の対応の遅れに加え、数百万円ともいわれる個人負担や住民の合意形成などハードルは高く、実現に至っていない。舞浜三丁目自治会震災復興特別委員会「チームM3」委員長の伊能隆男さん(51)は「液状化対策なしに、復興はあり得ない」と力を込める。 ディズニーランドにも近い舞浜三丁目は、高級住宅地として知られる。だが、地中深く杭(くい)が打たれたマンションと違い、一戸建て約五百五十世帯の約七割が液状化で傾いた。「(遊園地にある)ビックリハウスのようだった」と、当時自治会長だった伊能さんは振り返る。 震災直後の三月末には、自治会の住民有志で復興に取り組む「チームM3」を結成。独自に町内の道路の測定や地盤調査を進め、復旧工事について住民説明会を開いた。 家の傾きを直す工事には、二百万円から六百万円ほどがかかる。それでも舞浜三丁目は浦安市内でいち早く、貸家や引っ越した住民を除くほとんどの世帯で、補修や建て替え工事が完了した。 ただ、肝心の地盤対策をしないと、再液状化の恐れは免れない。市が地盤対策として、地下水をくみ上げて地盤の強度を高める「地下水位低下工法」、街区ごとにセメントの壁を地中に埋め込む「格子状地中壁工法」をまとめたのは昨年十一月で、地域ではほとんどの家の補修などが終わっていた。市も個人負担を減らすため、家の周囲の公道と宅地を一体的に工事し、国の補助を活用する方針。しかし、宅地部分は個人負担で、費用は一戸当たり数百万円は下らないとみられている。 国の補助を受けるには、工事区域の住民の三分の二以上の合意も必要。浦安市は一区域を百戸程度とする考えだが、家の補修で多額の出費をしたばかりの人もいる。「これ以上の負担は難しい人もいる。震災直後ならまだ意識も高かったが、日常が戻ってくると温度差も出てくる」(伊能さん)と、一筋縄ではいかない難しさを抱える。 市は、液状化対策の説明会を地域で三月から開く予定だったが、準備が遅れて四月にずれ込みそう。伊能さんは液状化対策の遅れについて、住民合意の条件など「国の制度に使いにくさがあるのでは」とも感じている。 それでも「液状化は埋め立て地の多い全国の都市部で起こり得る。風化させてはいけない。挑戦しないと」と、安全・安心な街へ手探りが続く。 ◇ <支局デスクから> 企画「共に生きる〜3・11から2年」は、震災二年を機に、「被災者の今」「支援する人の今」を伝えようと始めました。三千人を超える福島県からの避難者で、浪江町の人が五百九十二人いることも、今回取材を通じて知りました。伝えられなかった「今」もたくさんあります。 私の母親も南相馬市小高区生まれで、叔父夫婦は今も家には戻れません。二年がたっても、被災者の数だけ震災で強いられた「今」があると実感しています。今後は再び、企画「3・11から」を続けます。(吉田昌平) ◆取材記者から舞浜三丁目を歩いていると、東京ディズニーリゾートから汽笛が聞こえてくる。ただ、足元に目をやると、道の継ぎはぎが目につく。上下水道や道路、ガスなどの公共工事の期間がずれ、同じ場所を何度も掘り起こすケースもあるからだ。「いわゆる縦割り行政の弊害。民間なら考えられない」と伊能さん。 人材バンクともいうべき多彩な専門家の住民によるチームM3は、昼夜、休日をとわず活動を続けている。住民の願いはシンプルで「震災前のように、美しく住みよい街に戻したい」ということ。きっと遠からず、その日は訪れる。前を向き精力的に動く伊能さんらの姿にそう感じた。 (村上一樹) PR情報
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