自己啓発主催者ら書類送検=セミナー中に男性死亡—遺棄致死容疑で・警視庁

 マルチ商法団体の会員らによる自己啓発セミナーで2010年、大阪市の男性=当時(26)=が亡くなる事故があり、警視庁府中署は16日までに、保護責任者遺棄致死容疑で、セミナーを主催した人材能力開発会社「ASKグローバル・コミュニケーション」(東京都豊島区)の代表(61)と団体の幹部ら計3人を書類送検した。送検は先月28日付。遺族が刑事告訴していた。

 告訴状などによると、男性は、連鎖販売取引(マルチ商法)を用いた米国の健康用品販売会社の会員で構成する団体「ワンダーランド」に入会。10年1月、東京都府中市のホテルの地下で行われた会員らの自己啓発セミナーに参加した。セミナーの3日目、激しい運動をしている最中に倒れ、搬送先の病院で亡くなった。

 送検容疑は、現場にいたワンダーランド幹部らが、倒れた男性に必要な医療措置を行わず、部屋の隅に放置して死亡させた疑い。

 この運動では「お前本気出しているのか」「逃げるな」などと怒鳴られながら、手足を激しく動かしたり飛びはねたりするという。遺族側は「セミナーはマルチビジネス拡大のための洗脳が目的で、過酷な運動を強いられた」としている。

 事故をめぐっては、ASK社などが安全配慮を怠ったのが原因として、遺族が損害賠償を求め提訴。大阪地裁は12年1月、「主催者らは男性の生命の危険を認識できなかった」として訴えを退けた。遺族が控訴し、大阪高裁で審理が続いている。

 ASK社の顧問弁護士の話 民事訴訟では過失責任がないと判断されており、刑事的にも責任はないと考えている。 

[時事通信社]

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