市販の点眼薬には、メントール配合で清涼感の強い、いわゆる「クール系の目薬」があります。
- 「スカッとする目薬を常用していますが、すごく気持ちがよいのですが、こんなに刺激の強い目薬をずっと使い続けていても問題はないんでしょうか?」
と聞かれることがあります。
●基本的に刺激感の強い目薬でも眼球に悪影響を及ぼすことはありません
薬品は安全性を確認した上で販売を許可されたものですから、通常の使い方では、眼球に悪影響を及ぼすことはありません。
●ただし、点眼時の爽快感のあまり、回数が増えてしまい、誤った使い方により障害が出ることがあります
連続した使用で刺激に慣れてしまうと、さらなる爽快感を得るためにますます目薬の回数が増えてしまい、添付文章の決められた用法以上に使用頻度が上がり、安全性を超えた使い方で粘膜に障害をもたらすことがあります。
これが、例えば、花粉症を生じている目に使うと、目薬の抗アレルギー作用により症状が改善するどころか、結膜への障害性が増し、かゆみや充血がさらにひどくなることもあるのです。
また、メントールを含む目薬にも日持ちするように防腐剤を含んでいます。本来はその防腐剤は低濃度では眼球には障害を起こすことはありませんが、涙液が減少しているドライアイの目に使うと、防腐剤が洗い流されることがなく、さらに点眼の回数が増えて、防腐剤が長く角膜を刺激するために角膜に傷を作ることがあるのです。さらに、メントールがその傷を刺激して、爽快感を感じるはずのものが、沁みるような感覚に変わり、さらに傷の程度が強くなってくるにつれて痛みへと変わってきます。これは、ドライアイになりやすいコンタクトレンズ使用中の目にも同様のことが言えますので、点眼時の爽快感が沁みるような感じになってくれば要注意です。
●メントールを含む目薬は刺激感が強いため、反射性の流涙が増し、涙をとどめておくべき油分などのうるおい成分が流れやすくなります。
目薬をさせばさすほどかえってドライアイの症状が強くなるケースもあるのです。これは何度も洗眼をしているとかえって乾燥感が強くなるのと同じ理由です。
●角膜潰瘍や急性緑内障などの痛みの出る病気に対して、痛みをメントールの刺激でごまかして、眼科への来院が遅れて重症化するケースもあります。これらの病気は治療が遅れれば最悪失明まで至る病気です。
すべてのお薬で言えることですが、お薬を安全に使うためには正しい使い方をすることが前提です。添付文章をよく読み、お薬では十分に治らない時には専門医を受診されることをお勧めいたします。 以上のことは、晋遊舍「MONOQLO」2009年11月号に取材を受けて書いておりますので、興味のある方はご覧いただければと思います。