記事 中国労働

このままではまた起きる実習生による事件

猪野亨

2013年03月16日 23:19

広島県江田島市で起きた実習生による殺傷事件は、実習生の置かれた環境が今なお改善されていないのではないかということが伺われます。

通常、実習生が実習先に行くためには、中国国内の斡旋窓口(ブローカーもどき?)を通して、日本の受入機関とのやり取りになりますが、中国国内の斡旋窓口に対しては、高額な手数料を納める、契約を破った場合の高額な違約金という制裁があると言われています。

かつて、日本国内では、違法な労働条件で働かせていたとして、受入機関などを相手に裁判などで争われ、実習生が勝訴判決を受けています(2010年1月29日熊本地裁判決の紹介ページ)。

日本国内では、建前としては一応の改善は図られているようですが(法務省「研修・技能実習制度について」)、もともと、このような労働力は日本国内でまかなわれなければならないものです。

建設業者の人手不足原因は労働を敬う精神の欠如

研修・技能実習制度の根源的な問題は別にしても、この江田島市の事件では、報道によれば、容疑者は祖国に帰りたいという思いに追い詰められていたようです。何故、そこまで追い詰められていたのかどうかが問われなければなりません。

本来、研修目的ですから、その研修を受ける必要がないということであれば、自分の意思で辞めたと言って帰国ができて当然です。

日本国内における日本人労働者であれば、ここまで追い詰められる前にすぐに退職して、帰郷してしまいます。

あるいは、辞められるという気持ちがあれば、ここまで追い詰められることもなかったかもしれません。 他の中国人実習生は、順次、帰国していたそうですが、単に精神的に追い詰められていたのが、職場や経営者だけの問題であったのかどうかが、是非とも解明されなければならないところです。

要は、辞めたければ辞めることができた、そして帰国できる状況にあったのかどうかです。

帰国するにできなかった事情が中国国内の斡旋窓口に問題があったのかどうか。 その意味では、日本国内の受入機関が、中国国内のどのような斡旋窓口を使っているのかも問われなければなりません一番、悪質なのは中国国内の斡旋窓口ではないかと思いますが、それを利用しての実習生の受け入れというのは、同様に問題というべきです。


根本的には、研修・技能実習制度は、日本の労働力の不足を補うための制度に過ぎませんが、そうであれば、実習生に対しては、受入機関だけでなく、日本国政府も、邦人保護と同じ程度の救済(保護)をしなければならないというべきです。

中国国内の問題ということで関係ないという態度は、労働力の不足を補わせてもらっている立場からいえば明らかに間違っているというべきであり、日本国政府は、その労働者(実習生)の処遇についても責任を持たなければならないのです。

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