東横渋谷駅:さよなら駅舎 地上から地下に切り替え
毎日新聞 2013年03月15日 21時22分(最終更新 03月16日 05時49分)
東急百貨店と地上で直結する東急東横線の渋谷駅が16日未明、49年にわたる役目を終えた。16日始発から東京メトロ副都心線との相互直通運転が始まり、地下駅に切り替わる。駅は地上2階から地下5階に移り、地上駅舎は5月以降に取り壊される。跡地にはJR東日本の敷地を含めて地上46階建てのビルが建設される予定。昨年4月には駅東口に高層複合ビル「渋谷ヒカリエ」がオープンしており、渋谷駅周辺は今後、大きくその姿を変える。
15日、地上の同駅は夕方ごろから写真に収めようとする利用者で混雑。午後11時を回ると、カメラを構えた鉄道ファンらもホームを見渡せる改札口脇を埋めた。東急は警備員ら250人を配置して対応。この日は切符に「さよなら東横渋谷駅」と書かれたスタンプを押すサービスを実施し、長蛇の列ができた。
長年、東横線を利用してきたという東京都世田谷区の呉服店店員、清水久美子さん(64)は「駅舎を建設当時から知っている。通学通勤はもちろん、改札で恋人と待ち合わせたり、生活の一部だった。私も今年定年を迎えるし、駅が変わるのは寂しい」とスタンプ入りの入場券を大切そうに眺めていた。
通勤で利用している杉並区の会社員、佐々木加奈さん(31)は記念に駅東口を望める1番線ホームを訪れた。「大学生の時も使っていたし、駅とつながる思い出がたくさんある」。ただ、京王井の頭線と東横線を利用しているため「地下駅になると乗り換えが不便になる」と嘆いた。
駅正面にある東口の歩道橋上でも多くの人が立ち止まりカメラのシャッターを切っていた。家族3人で訪れた横浜市の幼稚園経営、平等大智さん(66)は「高校の時、通学で東横線を使っていたので思い出深い。今はない東急文化会館でロードショー映画を見た」と懐かしがった。
日付が16日に変わった後も多くの利用者が改札口付近やホームで最後の姿を写真に収めていた。午前0時54分、最終の上り電車が入ってくると、利用者らから拍手がわき、改札脇で待っていた鉄道ファンが一斉にカメラのシャッターを切った。
東横線渋谷駅は1927年に開業。15日まで使われた駅舎は64年に完工した。四つの電車が入る頭端(とうたん)式ホームと、かまぼこ形の屋根が特徴で、三角形の天井の模様も人気だった。