勢い余って土俵下まで飛び出す白鵬(左)=ボディメーカーコロシアムで(加藤晃撮影)
|
 |
◇春場所<7日目>
横綱白鵬(28)=宮城野=は制限時間前の相撲で時天空を力強く寄り切り、ただ一人初日から7連勝とした。日馬富士は勢を寄り倒して5勝2敗。関脇把瑠都は高安の上手投げに屈して2敗に後退。1敗は平幕の常幸龍だけとなった。
◇
受けて立つ立ち合いを信条とする白鵬が、そうくるとは誰も思わなかっただろう。2回目の仕切り。相手の時天空は「さあ、いくぞ」といわんばかりの挑発めいたしぐさ。仕切り線に手をつき、体を揺らす。これで「少しカッとなったというのがあるかもしれない。何だよってなっちゃいましたから」。迎えた3回目。まだ時間前だったが、横綱は仕切り線から一気に飛び出した。
これには時天空も行司の式守伊之助もビックリ。時間前の仕切りでも常に立ち合えるようにするのが基本だが、それでも立ち合いが成立することはほとんどない。
時天空は「横綱をいつもより慌てさせようと思った。時間前に、というのは頭にあった。心の準備はできてました」という。だが実際に横綱が時間前に立つと驚いたように目をつむり、あれよあれよと寄り切られ、土俵下に尻もち。策におぼれ「自分で墓穴を掘った。しょうがない」と肩を落とした。
時間前の立ち合いを仕掛けられることはあっても、自分から仕掛ける横綱は極めて珍しい。受けて立ったように見えて、自分の体勢にしてしまうのがかつての大横綱双葉山。この「後の先」の真骨頂を目指す白鵬が「先の先」に出るとは、誰も思わないだろう。
時間前の立ち合いは横綱になってから初めて。入門してからも「1回か2回。十両の2場所目に当時の安馬(日馬富士)とあります」と記憶をたどる。「まさかと思ってるんじゃないかな。本人もビックリしたでしょうね。一瞬、待ったかと思ったけど、行司さんが残った! って言いましたから」と振り返った。
8日目に勝ち越せば26回目のストレート勝ち越し。千代の富士を抜き単独1位だ。その先に2桁勝利を決めれば37場所連続で北の湖と並ぶタイ記録。そして千秋楽まで突き進めば、双葉山と大鵬を抜き単独1位となる9度目の全勝Vが待っている。
「(記録のことは)場所前から知ってるよ。今は忘れたけど」。一番一番の積み重ねの大事さを白鵬は知っている。 (岸本隆)
この記事を印刷する