東日本大震災からまもなく2年。
今回は、津波からの避難の際の車などの渋滞対策についてお伝えします。
こちらは震災当日の宮城県気仙沼市沿岸の様子です。
海沿いの道路は車に乗ったまま避難しようとする人たちの車で大渋滞し、津波から逃げ遅れ、亡くなった人が相次ぎました。
首都圏の沿岸で同じ事態が起きた場合には、さらに大きな被害が出るおそれがあると指摘されています。
避難対策はどこまで進んだのか。
神奈川県の湘南海岸を取材しました。
首都圏有数の海辺の観光スポット、神奈川県の湘南海岸。
海岸から標高の低い土地が内陸へ続いています。
神奈川県は東日本大震災と同じように10メートルを超える津波が来るおそれもあると想定しており、車で渋滞する道路に大津波が来た場合には、甚大な被害が出るおそれがあります。
海岸のすぐそばの川沿いに住宅地が広がる藤沢市の片瀬地区です。
津波が川をさかのぼり、広い範囲で浸水のおそれがあるとされています。
地区の自治会長を務める長谷川紀夫さんは、震災当日に目にした光景が今でも忘れられないといいます。
「この突き当たりが海水浴場なんです。あの時は津波警報が出ましたから、みなさんが車で一斉にこの道をだーっと避難してきたんです」と当時の混乱ぶりを話します。
津波警報が出されていた当時、海沿いの国道を走っていた車は内陸部に避難しようと、片瀬地区の小田急線の踏切に集中、ここで渋滞が起きました。
ようやく踏切を抜けた車は、こんどは500メートル先にある江ノ島電鉄の踏切で完全に行く手を遮られました。
停電で遮断機が降りたままだったとみられています。
行き場を失った車でこの道路は大渋滞し機能しなくなりました。
この混乱は、踏切に鉄道会社の社員などがかけつけて、手動で遮断機を上げるまで続いたといいます。
こうした混乱を教訓に受けて、神奈川県警は車での避難は限界があるとして、新たな規制のあり方を検討しています。
警察は、浸水予想区域への進入を禁止し、できるだけ車を置いて避難するよう呼びかける方針です。
神奈川県警都市交通対策室の鴻巣龍太郎副室長は「実際に津波警報が発表されれば、一斉に内陸部のほうへ向かって車が避難すると思いますが、そうすると渋滞とか、交通の混乱が生まれて速やかな避難ができなくなる。やむをえない場合以外は車は使用しないでください。原則、徒歩で避難してください」と、訴えています。
一方、車を降りた観光客はどこに避難すればいいのか。
対策に乗り出した自治体もあります。
神奈川県逗子市です。
巨大地震で想定されている津波の高さは最大で13メートル。
市街地の広範囲が浸水するとされています。
そこで逗子市が注目したのは市内を囲む高台です。
車から降りた人にいち早く高台に逃げてもらい、素早い避難につなげようと考えたのです。
逗子市防災課の山田茂樹課長は「逗子海岸の場合は、大体1日3万人の海水浴客がみえます。こういう方たちはやはり逃げ場を失いますので、どこに逃げていいのか分からない。そういうところでは、避難場所がこっちだよという案内ができれば高台に逃げていただくことができます」と、市の新しい取り組みを説明します。
市ではまず、NPOに協力してもらい、道路上に避難場所まで誘導する標識を新たに設置しました。
標識には最寄りの避難場所の名前と距離が書かれ、避難する方向を矢印で示しています。
初めてきた人でも、標識どおりに進めば、混乱せずに避難場所までたどり着ける仕組みです。
また、夜間に停電しても見えるように、暗闇でも光る材料を使用しました。
逗子市ではこうした標識を今月中にまず30か所設置し、今後、あわせて200か所に設置する方針です。
さらに、避難場所につながる通路の整備も進めています。
高台につながる階段を新たに設置するなど、これまでに4か所でこうした通路を整備し、避難の呼びかけや誘導の訓練を繰り返しています。
山田課長は「先の大震災でも、実際には東北で車が流されている。渋滞のさなかに津波が来ています。そういうことを意識しながら、逃げてもらいたいと思います。自分たちでどんどん逃げてくださいっていう仕組みを、植え付けていかないといけないと考えています」と話しています。
神奈川県の想定では、沿岸には最も早い場合には、10分以内に津波の第一波が到達すると予想されています。
海岸近くでそれぞれの場所にどのような津波が起きる可能性があるのか、避難場所はどこかなど、私たちひとりひとりがあらかじめ確認しておくことが、いち早い避難には不可欠だと改めて感じました。