甲府−名古屋 後半、グランパス・本多が先制ゴール 喜ぶ本多(左)ら=山梨中銀スタジアムで(今泉慶太撮影)
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名古屋グランパスは甲府を1−0で振り切り、開幕3試合目で今季初勝利を挙げた。後半ロスタイムにセットプレーから新人DFの本多勇喜(22)がプロ初ゴールを決めた。横浜Mは磐田に2−1で競り勝ち、開幕3連勝で首位を守った。仙台は柏を2−1で下して今季初白星を飾った。
◆名古屋1−0甲府
後半ロスタイム3分。極度の緊張と疲労で既に両脚はつっていた。敵陣ペナルティーエリア付近での味方FKに「中央で競り合うのは無理」とファーサイドで待ち構えた。次の瞬間、田口のFKを甲府のGK荻がキャッチミス。目の前にボールがこぼれ落ちてきた。
「『来た』と。落ち着いて足の裏でいきました」。棒のようになった左脚を必死で投げ出した。あとのことは覚えていない。次々に飛びついてきたチームメートの下でもみくちゃにされ、「大学時代の得点は確か1点だけ。信じられない」と興奮して語った。
プロ初出場のチャンスが突然やってきた。出場予定でいたDF増川が以前から痛みを抱えていた腰を悪化させてしまい、遠征組で控えDFだった本多におはちが回ってきた。「先発は試合前に知った。心臓ばくばくになりました」と心の準備をする時間もなかった。
ピッチでは自分のプレーに集中した。1対1では身をていした守りで決定機をつくらせず、空中戦では自慢のジャンプ力を見せつけた。「少しは持ち味を出せた。相手に負けたくなかった」と、最終ラインで踏ん張り続けた“ご褒美”が最後に舞い降りてきた。
サッカー選手としてはエリートとは言えない。阪南大では4年でレギュラーを奪取。良くも悪くも闘争心を表に出しすぎる面もあり、下級生からは親しみを込めて「ヤンキー」と呼ばれた。そんな“雑草男”がグランパス入り。開幕スタメンを奪った同い年のDF牟田に刺激を受けた。「自分では負けているとは全然思っていない」。胸中にはひそかなる決意を抱いていた。
プロ初出場、初スタメンで、後半ロスタイムにプロ初ゴールの離れ業。試合後には「自分でも『持っている』と思います」と日本ハム・斎藤佑樹投手の決めゼリフを引用して見せた。「持ってる」男の一撃は開幕から苦戦続きのチームに貴重な初勝利をプレゼント。「超」の付くラッキーボーイの出現で、グランパスに追い風が吹き始めた。 (木村尚公)
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