もしも科学シリーズ(42):もしも球を分解したら

  [2013/02/10]

先日、平面上の球が触れる面積を論じたコラムを見かけた。答えはゼロで、宙に浮いているのと変わらない。事実は小説よりも奇なりだ。
もし現実が数学通りになったらどうなるのか?概念だけの点や線、2次元と3次元のはざまなど、矛盾に満ちた世界で暮らすことになりそうだ。



■見えない線、存在しない点

文字や図形を表すのに欠かせない点と線。ユークリッド幾何学では、点は位置を表すだけで長さも面積もなく、線は長さだけをあらわすだけで幅のない図形と定義されている。正確にこの定義に従うと、描くことができないし、描けても見えない。図形を分解すれば最後は点になるから、存在すら確認できなくなってしまう。

中でも円や球には数多くの不思議が詰まっている。球の表面積は半径×半径×π(パイ)×4で求められ、円周率πはおよその数だが×4は概数ではない。どこから見ても曲面なので、広さを測るのは至難のわざに思えるが、たった4つの数を掛け合わせるだけで正確に求められる。

球の表面積はどのように求めるのか?直方体や立方体のように平面に囲まれた図形なら、それぞれの面積を合計すれば良いのだが、球にはこの方法は通用しないので、円にスライスしてから計算するのだ。

球の中心を通る補助線をイメージし、補助線と直角になるように輪切りにする。どれだけ薄く切れるかが重要で、厚いと精度が下がってしまう。3次元の球を、高さのない2次元の円に変えるのがポイントだ。

スライスし続けると、大きさの異なる円が大量に発生する。切り終わったら、円の周りの長さを測って合計する。外周はもともと球の表面だったのだから、バラバラに切り分けてから合計しても、同じ大きさになるはずだ。

整理すると、
 ・3次元の球を、2次元の円に切り分けた
 ・円の外周は、もともとは球の表面だった
 ・バラバラになった円の外周を合計すれば、表面積に一致するはず

しかし、ここで矛盾に気づく。

円の厚みはゼロだから、外周を引き延ばしても幅ゼロの線にしかならない。長さはあっても面積はないはずだ。

もし「長さの合計=面積」が正しければ、円は2次元ながらも高さがあることになり、「円の高さ=ゼロ」が正しければ、合計しても球の表面積はゼロになってしまう。

球から見れば円は存在しないし、円から見ると球が存在しない。ウソつきはどちらだ?

■体積のない球

球の体積は半径の3乗×π×3分の4で求められ、表面積と同様に「だいたい」ではなく、3分の4もおよその値ではない。

体積の求め方は表面積とほぼ同じで、外周の代わりに円の面積を合計する。やはり2次元の円が無限に発生するので、計算するのが大変そうだが、地道におこなうしか方法はない。

切り分けた円はすべて球の一部なのだから、円の合計は球にならないとつじつまが合わない。そう信じてひたすら計算するうちに、また矛盾にぶつかる。

 ・円は面積だけだから、合計しても体積にはならない
 ・球には体積があるから、切り分けた円にも体積があるはずだ

線と面積、面積と体積は、それぞれ次元が異なるのだから、合計するだけで次元を超えるはずがない。もし正なら、足し算こそが別の次元への入り口になるのか?

種明かしをすれば、これらは高校の数学で習う積分で、ある瞬間の出来事を合計して全体を求めているにすぎない。

ポイントは、全体=連続した瞬間と考えることで、1コマだけ見れば静止画のフィルムも、連続すれば動画と同じだ。先の例では全体である球を切り分け、瞬間に相当する円を求めて計算したのだが、この2つを単純に比較したから錯覚しただけのことだ。

■まとめ

時の流れに今は存在しない。積分と同様に、瞬間を表した概念でしかないからだ。

人生はドラマに例えられるが、積分をベースにすればパラパラ漫画のようなものだろうか。漫画では聞こえが悪いので、やはりドラマと表現しておこう。

(関口 寿/ガリレオワークス)

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