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第2回「あなたのNPOの税金度判定」


印刷用ページを表示する 掲載日:2009年3月21日

 

NPO法人が法人税法上の収益事業を行い所得(儲けのこと)が出たときに国税である法人税などの税金がかかります。その際、収益事業を行なっているかどうかという判定が、NPO法人の税務上重要な問題なので、この回では税金度の判定ということで「収益事業」についてお話しします。


1 収益事業って何? NPO法と法人税法では定義が違う

NPO法上の収益事業(その他の事業)と法人税法上の収益事業はその定義が異なるため、収益事業をおこなっているかどうかということが、NPO法人の税の実務面では一番厄介なもののひとつです。


本来の公益目的の活動は収益事業ではなくその本来の公益活動に充てる資金を得るために行うのが収益事業(その他の事業)であるとするNPO法に対して、法人税法では、目的とかかわりなく収益事業を具体的に業種を限定し、つぎの2で述べる3要件すべてに該当しなければ収益事業とはなりません。


税法上明文規定はないが、本来の収益事業課税の立法趣旨からすると、収益を度外視して行う収益の生じない事業は収益事業ではないということになるため、無償で行う事業、有償であっても採算を無視した低料金で行う事業などは、収益事業には当然ふくまれません。

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2 収益事業の要件

法人税法上の収益事業とは、次に掲げる3つの要件をすべて満たすものをいいます。

  1. 法人税法施行令第5条に限定列挙されている"物品販売業"から"労働者派遣業"までの34業種に該当し、原則として不特定多数を対象とするもの。
  2. 1.に掲げる事業を「継続的に」行っていること。
  3. 1.に掲げる事業を「事業場を設けて」行う場合であること。

収益事業を行っているかどうかは、所轄の税務署がその実態をチェックして最終的に判定することになります。税務署やその担当官の判定にバラツキがある場合もあり、現場の混乱を招いている面もあります。また、NPO法人が、所轄の税務署に収益事業と判定されたとき、収益事業を行っていないとしてそれを覆すのは非常に困難を伴うものになっています。


3 付随行為

上記2の1.の事業を行うNPO法人が、その事業に付随して、次に掲げるような行為によって生じた収益は課税対象となります。


  • 出版業に付随してその事業に関係する講演会の開催収入、出版物に掲載する広告収入
  • 技芸教授業に付随してそれに関わる教科書や教材の販売収入、バザーの開催収入
  • 旅館業または料理店業に付随してその旅館等で行う会議等のための席貸し収入
  • 興行業に付随してその催し物をテレビ等で放送させたときの放送権料収入
  • 収益事業より得た運転資金の運用益(受取利息等)

ただし、事業廃止に伴う資産売却益や長期保有(おおむね10年以上)不動産の売却収入は、付随収入とはなりません。

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4 収益事業者にならない場合!

前述の2の3.の条件を満たし明らかに収益事業に該当する事業を行っていても、社会福祉に貢献する場合は例外的に収益事業とはみなさず課税されないこともあります。それは、「身体障害者や65歳以上の高齢者等の雇用が半数以上を占め、かつ、その事業が障害者等の生活の保護に寄与している場合」で、寄与しているかどうかは、その事業に従事して得る収入がなければ生活保護を受けざるを得なくなるような事情にあることとされています。


5 各業種の留意点

前述の2の1.の収益事業の業種のうちNPO法人と関係が深いものについて、その留意すべき事項をお話しします。

  1. 医療保健業

    本来は病院や医院のことですが、NPO法人との関係では、高齢者に福祉サービスを提供する"介護保険事業"と障害者にサービスを提供する"支援費事業"が主となります。例外はありますが、法人格を持たないNPOが事業者となることは少ないと考えられます。社会福祉法人や一部の共済組合などが介護保険事業を行う場合には非課税であるという規定があり、まったく同じ事業を行いながら社会福祉法人などが非課税で、NPO法人は課税されるという矛盾が現実にはあります。

  2. 物品販売業

    卸売業と小売業のことであり、動物や植物も含め商品を販売するものはすべて含まれます。農林水産業については不特定多数を販売対象とするのみ該当し、農協等の特定の業者にだけ卸売りをするときは該当しません。NPO法人の会員等に仕入原価に実費経費程度を足して販売するときも該当しませんし、逆に不相当に高額な販売はその部分が寄付金とみなされます。いわゆるバザーなども原則として年間に1~2回程度の開催であれば該当しません。

  3. 請負業

    他者に対して役務を提供し報酬を受ける行為のことをいい、事務処理の委託も含むため、民法の請負の規定より広く委任契約の一部もその範囲に入り、上記1.や2.に次いでNPO法人にはかかわりが多い業種です。この場合、原則として"請負契約"は精算報告は不要ですが、"委任契約"は精算報告を必要とします。委任契約の典型が行政(国や地方公共団体)から委託を受けた調査、研究です。第3回の4で述べる実費弁償方式であれば収益事業にならないため、申告は不要ですが税務署長の5年ごとの確認が必要となります。

  4. 技芸教授業
    • 限定列挙された洋裁から小型船舶操縦業までの22業種で一般的な技芸の教授に該当するもの
    • 入試や学校教育の補習を目的とする予備校、進学塾、学習塾等で学力の教授に該当するもの

    の2つに分けられ、これら以外の、例えば語学教室、パソコン教室、ボランティアセミナーなどは含まれません。介護保険事業を行うNPO法人がヘルパー養成講座をおこなった場合は、医療保健業の付随行為として収益事業とされます。材料費などの差益が生じない実費程度のものを受け取って行うときは該当しません。

  5. 料理店業その他の飲食店業

    不特定多数の者に飲食物を提供する事業をいい、自ら調理する場合や他から仕出しを受けて提供する場合も該当し、高齢者への配食サービスも含まれます。地域の人とのふれあいや会員相互の意思疎通のために事務所の一部を利用して喫茶コーナーを開いた場合も該当します。


    講師:山田清

    プロフィール:税理士・行政書士・一級FP技能士 平成7年3月下旬の阪神・淡路大地震の災害ボランティアとしての参加などからNPOとの関わりあり。著書に「あなたが社長だからできる節税88」(共著)、「中国の税制」(共著)、「病医院のための痛税対策」(雑誌連載)等あり。

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