第五話 そんな装備で大丈夫か?大丈夫じゃない問題だ。
少し時間をおいて、私たち4人は荷物置き場に再集合した。荷物置き場は装備の準備をするサバゲーマーでごったがえしている。それにしても多い、サバゲーというのはかなりマイナーな遊びだと思っていたが。今日フィールドに集合したのは約30人その人数を聞いても驚きなのに、中には女性もいて更に私を驚かせた。
「よし、俺たちも銃の準備をするか」
「了解~」
ヨッシーさんとジャックさんが自分の電動ガンの準備を始めた。
ヨッシーさんの装備は【H&K G36C】 ジャックさんの装備は【SIG SG552】。
どちらも【東京マルイ】【①】という会社の電動ガンらしい。
「2人ともマルイという会社の電動ガンなんですね、電動ガンを作っている会社ってマルイしかないんですか?」
2人の電動ガンと他のサバゲーマーの電動ガンを見比べながら聞いてみる。 さっきから大量のサバゲーマーの中にいると、マルイというメーカーの名前をよく耳にするからだ。
「ああ、マルイ以外もメーカーあるにはあるんやけど……」
ジャックさんは最後の言葉を濁す。なにかあるんだろうか?
「性能でいったらマルイが最強、他社にくらべてぶっちぎりやな」
ジャックさんに代わってヨッシーさんが答えてくれた。
「へえ、そうなんですか?」
「ああ、日本のエアガンメーカは優秀やけどその中でもマルイは一番や」
ヨッシーさんは電動ガンにバッテリーを装着しながら答える。その後準備を済ませたヨッシーさんがあまりにも無知な私に、エアガンについて少し教えてくれることに。
「今は外観が実銃にそっくりな中華製も人気だ」
「中華?中国製のことですか?」
「そう、だが中華製は新品を購入しても、箱から出したらメンテナンスをせずに使用してはならないという暗黙のルールが存在する!!」
「「新品なのに!?」」
あまりの理不尽さに私と山田さんの声がシンクロする。餃子でも日本を騒がせた中国がまさかエアガンでも日本中を騒がせていたとは驚きである。
「まず中華電動ガンは、新品だろうが中古だろうが内部をメンテ、それから粗悪な部品を取り出しマルイ製のものと交換する」
ここまで聞いていると東京マルイという会社のすごさがわかってきたような気がします。他社の製品の内部パーツの交換に推奨までされるメーカーとは、マルイ恐るべし。
「マルイってすごいですね……」
「ああすごい、というわけで今日お前たち2人に貸し出す電動ガンもマルイ製だ。」
そう言うとヨッシーさんは巨大なバッグを私と山田さんの前に差し出した。すっかり忘れていましたが武器はヨッシーさんが貸してくれる約束でした。山田さんと私は高鳴る胸の鼓動を抑えながらバッグを開けました。
「畜生があっっっっっ!!!!」
この世に神様なんていない。私は悲しみの叫び声を上げながら地面に拳を叩き付けた。そのの横では勝ち誇った表情の山田さんが私をさげすみ、見下している。さらにその隣ではヨッシーさんとジャックさんが、まるでバカを見る表情でこちらを見ていたが私は気にすることはなかった。
5分前
バッグの中には2丁の電動ガンが入っていました。
「こいつは……」
私は思わず息を呑みます。
「なんてという名前の銃ですか?」
両方知らない銃でした。
「バカ野郎!!M4だっM4、お前M4連呼してたのになんで知らないんだ!!」
ヨッシーさんが思わず叫んでいるが。ああ、これが有名なM4ライフル、米軍装備ファンの方、申し訳ない。G36、SIGを見せ付けられた後に初めてノーマルのM4を見た私の感想は、ほんの少し、本当に少しだけ、しょぼいと思ってしまった。
「で、こっちのチワワみたいな銃はなんです?」
私はもう1つの電動ガンを手に取る。大きさはピストルより大きいぐらいで今までの銃とは違い未来的な独特の形をしている。そして持ったときの重さも、G36に比べだいぶ軽かった。
「それは【MP7A1】【②】2004年にドイツ特殊部隊に採用された最新型だ」
私はMP7を構えてみる。その感想は……。
「なんかしょぼいな……」
「謝れ!!全てのドイツ装備サバゲーファンに謝れ!!」
本当に申し訳ないです。このときの私は完璧にMP7をしょぼい電動ガンだと思っていました。今ではもちろん考え方を改めさせていただいています。どうかドイツ装備ファンの方怒らないでください。
「まあいい、2人共どっち使うかは話し合って決めてくれ」
そのヨッシーの一言に私と山田さんが目線を合わす。そして同時にM4ライフルを見る。そして同時に目線が戻る。
「山田さん……私……M4が使いたいなー……」
「奇遇だな守宮!! 俺もM4が使いたい……」
にらみ合い火花を散らす私たち2
人漢なら、デカイ銃を使いたい……。
漢なら、デカイ銃をぶっ放したい……。
漢と
漢の魂がぶつかり合う。
「山田さん、車に乗った時から、こうなる気がしてましたよ」
「俺もだ守宮!! お前とはこうなる運命だったのかもな」
「車の中で2人で楽しそうにしりとりしてたやん……」
ジャックさん、それは昔の山田さんの話、今の山田さんは私の強敵なんです。
「準備はいいですか山田さん?」
「いつでもいいぜ!!」
二人は共に拳を突き出した。
「「じゃん!!けん!!……」」
5分後
私は敗北した。これ三回勝負だから作戦を発動しても勝てなかった。もう私は彼になにも言う資格はなかった。
「ジャックさん、私はこのチワワガンと共に戦場で蜂の巣にされれ死ぬんです」
「やもりん、大丈夫やって……」
こんな私を慰めてくれるジャックさん……しかし。
「こんなの絶対勝てませんよ!! 皆あんなにデカイ電動ガン持ってるじゃないですか!!こん小さな電動ガンじゃ射程距離で負けてフルボッコですよ!!」
私がこう叫んだ瞬間でした。ヨッシーとジャックさんは顔を見合わせると2人同時に笑い始めました。私は意味がさっぱりわかりません。
「なっ、なにがおかしんです!?」
私は顔を真っ赤にして爆笑している二人に問いかけます。
「あのなやもりん、エアガンは法律で威力が決まってるんや。大きさに関係なく」
ジャックさんが笑いをこらえながら答えてくれたが、いまいち意味がわからない。
「だから守宮、エアガン弾の飛ぶ距離はどんな銃でも変わらないんだよ」
ヨッシーさんのこの一言で頭の中が混乱する。
「えっ!! じゃあ、向こうのおっさんが持ってる狙撃銃と、あっちのおっさんが持ってるピストルは飛距離同じ!?」
「ああ、大体一緒だ。だから守宮心配しなくて大丈夫だ」
ここで私は大きな勘違いに気がつきました。私はサバゲーをTVゲームの延長だと思い込み武器も同じように巨大=強力な武器だと勘違いしていたのだ。そうなると今まで自分が駄々を捏ねていたことが急に恥ずかしくなった。
「申し訳ないヨッシーさん」
ヨッシーさんに謝った。勘違いでとんだ言いがかりをつけてしまった。
「いいぜ別に、こっちの説明不足だった」
全部こっちが悪いのにサラリと許してくれるヨッシーさん。今のあなたは天使に見えます。
「皆さん広場に集合願います!! 今から今日使用するフィールドを案内します!!」
拡声器を使った山名さんの声が荷物置き場に響いた。荷物置き場のサバゲーマーたちが、一斉に広場に向かって移動を始めた。私たち4人も荷物を置き、早足で広場に向かう。
「おっと山田、守宮、言い忘れてた」
「「?」」
後ろからヨッシーさんに声をかけられ私たち2人は同時に振り返る。
「後で電動ガンのレンタル代徴収するからよろしくな」
私と山田さんはヨッシーさんの声を聞かなかったことにして広場に向かうのであった。
以下Wikipediaからのコピペ
①【東京マルイ】東京マルイ(Tokyo Marui Co., Ltd. )とは、東京都足立区綾瀬にある、トイガンやラジコンを製造・販売する企業。正式名称は株式会社東京マルイ。エアソフトガンメーカーとして国内最大。玩具としての使い勝手が良い設計と幅広い価格帯は、エアソフトガン市場におけるマルイのシェアを大きく広げることとなった。エアコッキング式ショットガンシリーズやガスリボルバー、エアボルトアクションライフル「VSR-10」など、新カテゴリーの開拓も継続的に行っている。
②【MP7A1】MP7の特徴は【P90】【③】に対抗する目的で【PDW】【④】としての全く新しいカテゴリの銃として開発された。デザイン面については、FN P90とは趣が180度異なり、ステアーTMP、UZI等の既存の小型サブマシンガンと似たシルエットを持ちながらもと携行性及び隠匿性に特化したデザインとなっている
③【P90】PSG1と並ぶギア厨三種の神器の1つ
④【PDW】(Personal Defense Weapon:ピーディーダブリュー・パーソナルディフェンスウェポン)とは、1990年代に登場した銃器の形態の一つ。短機関銃と類似性が高く、近年登場した銃器カテゴリーであるため、短機関銃の一種として評価、評論する専門家、専門誌もある。日本語では「個人防衛火器」「個人防御火器」等と訳される。