最後を惜しむ鉄道ファンや乗客で大混雑となった、東急東横線渋谷駅の地上ホーム(撮影・矢島康弘)【拡大】
東横線渋谷駅は1927年8月28日、東京横浜電鉄の駅として誕生。現在の駅舎は64年から使用され、東京オリンピック当時の姿のまま、渋谷のシンボルの1つとして愛されてきた。クラム屋根と呼ばれるかまぼこ型の屋根は、まさに渋谷の玄関口だった。
営業最終日となったこの日は、鉄道ファンに東横線の利用者も加わり、地上ホームは大混雑となった。東急電鉄では“無事故”で歴史に幕を閉じるべく、250人もの警備員を動員し安全確保に務めた。
同社では16日にも再開発工事に着手する予定だったが、別れを惜しむ利用者の声を優先。今月26日から5月6日までの期間限定イベントスペースとして、ノスタルジーに浸る機会を提供する。
名称は渋谷駅の跡地利用、ということで「SHIBUYA ekiato」。クラム屋根を始め、歴史ある駅舎を可能な限り残して利用。ホームの線路部分は床上げし、天井高6・9メートル、面積約2350平方メートル、約2000人収容の広大な空間が誕生する。
利用者を公募するや、ファッション、IT関係を中心に応募が殺到。同社広報課の矢澤史郎さんによると、広告代理店の“1次選考”を通過した案だけでも160件に上り「とても期間中にこなせない」と、公募は数日で打ち切られた。勝ち残った企画は、今後随時発表していくという。
最終的に、東横線地上ホームの跡地は、現在の東急百貨店東横店や渋谷東急プラザも含めた、巨大な再開発用地となる。43階建ての高層ビル1棟と13階建て商業ビル2棟が、2027年の完成を目指して建設予定だ。
相互乗り入れで横浜-池袋間が最短38分で直通化されるなど、人の流れは大きく変わる。渋谷は素通りされる懸念があるが、矢澤さんは「短期的な影響は出ても、2027年までかけて街づくりをする過程に過ぎません。お客さまの移動の手段や機会を増やすのが、電鉄会社の仕事です」と、渋谷が人を寄せ付ける“磁力”に自信をのぞかせていた。
(紙面から)