第30話:海兵隊の真髄
寿春城、淮河の南岸に位置される古い街で南北交通の要衝であり、古来より兵家必争の地であった。楚の首都であり淝水の戦いの古戦場ともなっている。
いまその寿春城に反乱を起こした農民軍が接近していた。しかしこれは孫策の妹である孫権 仲謀が指揮をする農民兵に扮した正規軍だ。
そしてその後方には敵を挟撃する名目で布陣した孫策軍が準備を整えていた。
「いよいよね・・・」
「ええ・・・これでようやく祈願を果たせる」
「向こうの動きは?」
「はいぃ〜、袁術軍の軍師皆さんはお馬鹿さんばかりですから、気付く筈はないですぅ」
確かに袁術軍に動きが無い。籠城の準備をしているかに思えるが、向こうは袁家の武官と文官だ。優秀な奴がいる筈が無い。
いるとすれば袁術の側近であり、姉替わりの張勲だけだ。
「公瑾よ、あの者達はまだ動かんのか?」
「まだのようです。ライルはこちらに伝令を送るといっていましたが・・・・・・来たようです」
周瑜が指差した方角を見ると二台のハンヴィーがこちらに向かっていたが、一台は普通のハンヴィーでは無い。車内に統合端末攻撃統制機能を満載したM1145だ。ウルフパックでは実質上の戦闘指揮車両になる。
孫策軍兵士は何事かと警戒したが、ライル達だと知ると警戒を解いた。そして彼女達の前で停車すると次々と海兵隊員が降車して、1人が孫策達に歩み寄る。ウルフパックでも何人かいる女性隊員だ。
「失礼致します。孫策様でありますか?」
「私が孫策よ」
「お初にお目に掛かります。本官はウルフパックより派遣されました前線攻撃管制官のイリーナ・レインフォード中尉であります」
「えっと・・・・・・」
「気兼ねなくイリーナとお呼び下さい」
「そう、分かったわイリーナちゃん♪」
「それでイリーナとやら・・・最後の中尉やら前線・・・何たらは役職か何かか?」
「はい、中尉は階級・・・・・・兵卒や兵長の指揮官級とお考え下さい。そして前線攻撃管制官は要するに軍師のようなものです」
イリーナは簡単に階級と前線攻撃管制官について説明する。かなり砕いた説明だったので、彼女達も理解できたようだ。
「ライル中佐からの命令でこちらに戦闘指揮所を設置するように言われております。許可を・・・・・・」
「構わない、それでライル殿は他に何か言っていなかったか?」
「はい、間もなくでこちらも攻撃を開始すると仰っていました」
「どうやって攻撃するんですかぁ?」
「それは見た方がよろしいかと・・・・・・」
何やら陸遜の雰囲気が興奮気味だったので、危険になる前に回避した。
やがて設営の準備が完了した部下が報告すると、イリーナも所定の位置に就く。
「こちらストーム。設営完了しました。いつでも観測可能です」
<こちらウルヴァリン。了解した。北側の敵状況を報告せよ>
「予定地点に敵影無し。しかし城壁周辺に敵兵を幾分かを確認。座標は0-8-3、0-4-0」
<了解した。30秒後に攻撃を開始する。孫策殿達に備える様に伝えてくれ。ウルヴァリン out>
簡単に伝えると再び孫策達に歩み寄る。
「孫策様、間もなくで攻撃が始まります。出陣の用意を・・・」
「分かったわ、・・・・・・祭?」
「応‼任せておかれよ‼」
「しかし・・・ライル殿達の姿が見えないようだが・・・・・・・・・何だ⁉」
周瑜が北側を覗いていた瞬間、寿春城の北側が突然爆発した。それも複数だ。
立て続けに爆発が起こってその場にいた袁術軍兵士はもちろん、孫策軍兵士も驚きを隠せなかった。
この攻撃の元は北に4kmの位置にあった。
平原にある高台に並ぶ6台の鉄の塊・・・・・・・・・ウルフパックで使用されているM109A6PIM 155mm自走榴弾砲[パラディン]からの砲撃だ。
だがライル達の攻撃はこれだけでは無い。
「ちょ・・・・・・今の爆発は⁉」
「策殿‼」
「どうしたの⁉・・・・・・・・‼⁉」
「なんだ・・・・・・あれは・・・・・・」
彼女達は更に驚かされる事になる。それもそうだ。河岸に向かうように突き進む小型船のような装甲車と水上を轟音を鳴らしながら突き進む3つの巨体。
そしてそれらが上陸すると全体の姿を現した。ウルフパックの5両の水陸両用遠征戦闘車[EFV]にホバークラフト型強襲揚陸艇[LCAC-2]、更にそこから現れた2両ものM1A2[エイブラムス]と180名の海兵隊員だ。
「何なの・・・あの車は・・・・・・」
「なんというカラクリだ・・・」
見た事も聞いた事も無い兵器を前に全軍が驚愕するが、もちろんこれだけでは無い。とどめと思わす上空から飛来した複数の物体。
機首にM197 20mm3銃身ガトリング。両翼にLAU-61D/A 2.75in19連装空対地ロケットランチャー[ハイドラ70]2門。
8発のAGM-114M空対地セミアクティブレーザー誘導式ミサイル[ヘルファイアⅡ]を搭載したAH-1Z[ヴァイパー]4機。
機体側面にMk19 Mod3 40mmグレネードマシンガンを搭載した2機のCH-53K[スーパーシースタリオン]だ。
CH-53Kが着陸すると120名もの別の海兵隊員が降下して、袁術軍に対して攻撃を開始する。
陸上と上空からこの時代にはまさに最強の攻撃を行なうウルフパック。ライル達が最も得意とする敵前強襲上陸作戦である。
対して猛攻を受ける袁術軍兵士達は恐怖に駆られて逃げ出すが、互いが邪魔しあって逃げようにも逃げられず、次々と仕留められる。
その圧倒的な火力と戦闘力を前に孫策達はあぜんとしていた。
「すごい・・・・・・」
「なんという・・・・・・攻撃だ・・・・・・」
「これが・・・・・・“天の軍隊”・・・・・・」
「雪蓮・・・・・・」
「ええ・・・敵はライル達の攻撃で士気が無くなったわ、今がまさに好機・・・ライル達には負けてられないわね」
そういうと孫策は馬に跨り、腰に身に付けていた孫家に受け継がれる宝刀“南海覇王”を抜刀して、切っ先を寿春城に向ける。その表情はライル達に見せた明るい子供のような表情ではなく、指導者として、武将として、更に呉に暮らす民を守る守護者としての“英雄”の名に相応しい顔立ちだ。
「孫呉の民よ‼呉の同胞達よ‼幾多もの苦渋を味わい、待ちに待った時は今来た‼
我が宿敵袁術を討ち滅ぼし、呉の栄光を‼父祖より受け継がれて来たこの土地を‼
我等に力を貸してくれた“天の軍隊”と共に‼再び我等の手に取り戻すのだ‼
これより孫呉の大号令を発す‼
勇敢なる呉の将兵よ‼その命を燃やし尽くし、呉の為に死ね‼」
『応‼』
勇ましい演説をしながら孫策は南海覇王を高く掲げ、それを力強く振り下ろした。
「全軍‼出陣せよぉ‼‼」
『うぉおおおおおおおおおお‼‼‼』
兵士の大地を揺さぶる鬨と共に孫策を先頭に全軍が袁術軍に突撃する。西からは孫策軍本隊、南には回り込んだ孫策軍先遣軍、北にはウルフパックの猛攻。袁術軍に勝機は完全に無くなり、残るは東側だけだが、袁術軍を含めて孫策軍も気付いていなかった。
ウルフパックの攻撃全てが、壮絶な“陽動”で、本命は東側にいるということを・・・・・・・・・・・・。
孫策軍とウルフパックの猛攻を受ける袁術軍。既に勝敗は喫していたがライル達にはまだ手段があった。
寿春城内部への強襲。袁術という少女を救い出す。これがライル達の作戦[オペレーション“ライトニング”]だ。
次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”
[ライトニング]
孫呉の宿願、ついに叶う。
ウェポンライブラリー
HK416/417
口径:22口径/30口径
銃身長:9in、10in、14.5in、16.5in、20in/12in、16in、20in
ライフリング:6条右回転/4条右回転
使用弾薬:5.56mm×45NATO弾/7.62×51mmNATO弾
装弾数:30発/20発
作動方式:ショートストロークピストン
全長:560〜690mm、700〜796mm、804〜900mm、855〜951mm、941〜1037mm/805〜885mm、905〜985mm、1005〜1085mm
重量 2,950g、3,020g、3,490g、3,560g、3,855g/3,600g、3,870g、4,050g、4,230g
発射速度:650発/分、500〜600発/分
銃口初速:905m/秒
有効射程:850m/600m
ドイツのH&Kで開発された近代改修を施したM4A1のエンハンスドアサルトカービン。
リュングマン式からショートストロークピストン式への変更、ピカティニー・レールシステムの標準装備、新しいスチール製の弾倉の採用など、作動の確実性と耐久性の向上を企図している。銃身の長さが異なる製品が複数存在する。
特にショートストローク化されたガスピストンがロッド経由でボルトを押し戻すため、機関部内には高温で汚れた発射ガスが一切入らず、保守性、耐塵性が向上している。
銃身は冷間鍛造技術の採用によって長寿命化され、20,000発以上発射しても銃口初速が衰えず命中精度が維持できるとされている。
ウルフパックでも独自改良を施した仕様が主力メインアームとして採用され、改良は以下の通り。
HK416
・マガジンをSTANAGマガジンからMAGPUL PMAGに変更。
・グリップをMAGPUL MOEグリップに変更。
・ストックをMAGPUL CTRスライドストックに変更。
共通
・フラッシュハイダーがトロイ社製CQCハイダーに変更。
・スイッチ系統を大型化。
・アンビステクショナル機能の追加。
・チャージングハンドルのラックをBadger Ordnanceタイプに変更。
HK417
・グリップをSPRグリップに変更。
・ストックをフィックスストックに変更。
これらの変更で全体的に操作性と機動性が向上して、海兵隊の特性にフィットされている。
+注意+
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