主人公の本虫草太は長身で攻撃的な性格をしているにも関わらず、他人の前では弱腰で臆病者、いわゆる陰弁慶だった。
そんな草太には友達がおらず、いつも一人で居た。
そして彼の楽しみは、図書館で‘彼女’を眺めることだった。
彼女とは、図書委員の瀬名依津美(せないづみ)。
暇つぶし程度にしか本を読まない草太だが、瀬名を見るためだけに毎日図書室に入り浸る。
瀬名が図書委員の仕事を休む時は、草太は肩を落として図書室から出て行くほど、草太の思考はストーカーじみていた。
とある日、いつものように瀬名を眺めに図書室にやってきた草太。
瀬名は書庫整理をしており、書庫に入るたびに大量の本を抱きかかえて、図書室の机に広げている。
その汗を流す姿に惚れ惚れしていた草太だったが、目の前に積み重ねられた本の中の一冊に目を留めた。
その本は頭の下に敷いて眠ると他者の心に忍び込めるという不思議な本だった。
瀬名に気づかれないようにこっそりと本を持ち帰った草太は、その夜、半信半疑ではあったが、本を枕にして眠りについた。