(1)大胆な金融政策、(2)機動的な財政政策、この二つでデフレ脱却とインフレ目標に効かくか?
効く。確実に効く。市場はそれを知っているからこそ高いのだ。
「効かない」という意見を言う学者や評論家がいるが、彼らは今までに起きた事実を見てこなかったからだ。現に、「失われた13年」(1990年〜2003年)の期間に、膨大な不良債権を抱えながらも、財政出動でデフレを止めて景気を回復させ、平均株価を6割上昇させたという事実が3回あった。
その13年間の財政出動の経過をグラフ化して、日経平均グラフと景気動向指数のグラフ化とを重ねて見ればバカにでもわかる。しかも3回目は「ITバブル」というオマケまで附いた。
「効かない」というバカなことを言う評論家や学者のもう一つの型は、彼らの出身母体が大蔵省か銀行だからだ。言わば、彼らの国債の買い入れの大口取引先だ。その出身母体の影響を受けて話している。では、なぜ、その3回とも景気も株も短期で終わって、中途挫折してデフレ脱却まで行かなかったのかと言えば、訳は簡単だ。日銀が途中で金融政策を転換したからだ。その全回が既述の可虐趣味の三重野元総裁と、優柔不断で前言撤回の常習犯の速水元総裁であった。
日銀に、勝手にそれをさせないために今回は文書化させた。いわば“インフレ嫌いな日銀”に一札入れさせたのだ。よって確実に効く。
今まで半世紀、日銀が最も嫌ってきたのはインフレと政治介入であった。
「1本目の矢」と「2本目の矢」は確実に効く。既に効果は出始めている。
単なる金融緩和、しかも今までのような中途で中止してしまうようなやり方ではインフレは起こせないが、クルーマンが10年も前から説いていたようにインフレターゲットを定めて目的的に遂行し、財政政策を併用し、しかも成長戦略を本気で進めれば確実に効く。今までの日本はその二つ(目的的な金融緩和と財政出動)を同時に行ったことは一回もなかった。今回は違う。それを疑う人は経済学の基礎を知らないか、または知っていても現実の経済現象を見てこなかった人だろう。
安倍さんは自分が副官房長官と官房長官と総理の時代に、日銀の政策転換で3回懲りた経験がある筈だ。筆者の原体験と通ずるものがある。今度はそれをさせまいと、安倍さんは今までの3回から学習したのだ。
日銀総裁・副総裁の人事は、今回は最適人事だと筆者は思うが、それはやや過激な日銀非難の浜田宏一博士を含めたブレーンの知恵でもあろう。
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▓ 山崎 和邦
慶應義塾大学経済学部卒。野村證券、三井ホームエンジニアリング社長を経て武蔵野学院大学名誉教授に就任。投資歴51年に及び野村証券時代の投資家の資金を運用から自己資金で金融資産までこなす。
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