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いしかわGOODニュース

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11月24日(火)放送分
テーマ「エチゼンクラゲ」

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エチゼンクラゲと言いますと、漁業関係者にとってはこれ以上ない悪いニュースです。エチゼンクラゲは成長しますと笠の部分が直径1メートルを超えて、重さは200キロにも達するという大型のクラゲです。これまでも度々発生しては定置網などを駄目にして、漁業関係者にとっては悩みの種でした。ところが、このエチゼンクラゲ、ある漁業では逆に役に立っているというのです。それだけではありません、実は今、エチゼンクラゲを中国料理の食材として活用する動きも出てきているんです。
 

イメージ 日本海で大量に発生しているエチゼンクラゲ、志賀町にある富来漁港では港の中まで侵入しています。

イメージ これは先月29日、能登半島沖の日本海で撮影された水中の定置網の様子です。
網には大量のエチゼンクラゲが掛かり、いまにも、はち切れんばかりです。

イメージ 4年前から一昨年にかけて大量に発生したエチゼンクラゲ日本海側を中心に定置網が破れたり、クラゲの毒で、網に掛った魚が傷んでしまったりするなど、被害が相次ぎました。

イメージ 今年の大量発生を受けて、県内の漁協の中にはこれ以上の漁を諦め、定置網を引き上げる 所も出ています。志賀町にある、県漁業協同組合の西海支所でも例年よりも1か月以上早く定置網を引き上げました。

イメージ 県漁協西海支所 高岩 権治運営委員長

「いやー。すごいよ。平成17年の時もすごかったけど、今年のクラゲはそれ以上と思うよ。数がすごい。話にならないですわ。もう限界、たいへんな損害ですよ。」

イメージ エチゼンクラゲなどの大型のクラゲの分布を地図にしたものです。社団法人漁業情報サービスセンターが11月18日現在で全国の漁協などを通じて定置網や底引き網などに入ったクラゲの数を調査し、まとめたものです。
赤い部分はクラゲの数が千匹を超えたところで、ご覧のように日本海側では石川県のほか福井県や富山県でも、まとまった数のクラゲが確認されています。

イメージ さらに、このクラゲなんですが、津軽海峡から太平洋側へ回って、海流にのって南下してきているんです。
10月30日、千葉県銚子市の沖合で漁船が転覆する事故が起きました。
その原因は、網に掛った大量のクラゲの重みで船がバランスを崩したため、とみられています。千葉県の沖合で確認されたクラゲは、現在は関東地方の沖合を通過し、一部は紀伊半島の沖まで達しているということなんです。

イメージ エチゼンクラゲは中国の沿岸で生まれて、海流にのって日本にやってくるとみられていますが、エチゼンクラゲの詳しい生態ですとか、大量に発生するメカニズムについてはよく分かっていないんです。このため漁業関係者にとっては、大量に押し寄せてくるクラゲになかなか打つ手がない現状です。ところが、このエチゼンクラゲ、ある漁業では逆に役に立っているというのです。

イメージ 木村 豊男さん

志賀町にある赤崎漁港です。
午前7時過ぎ、木村豊男さんが漁に向かいます。

イメージ 沖合1キロ程のところで、まず、エチゼンクラゲを捕まえます。
なぜ、あえて、エチゼンクラゲを捕まえるのか、木村さんは、なんと、クラゲを餌に魚を捕っているのです。

イメージ 「今の時期だったらこれは赤ちゃん。まだまだ、でっかいのある。」
餌として使うのは、やわらかい足の部分です。
「この赤い部分を魚が好んで食べる。ただし、皮膚や体についたら痛いし、かゆいし、大変や。」

イメージ クラゲを詰めて、いっぱいになった袋を三つ。長さおよそ4メートルの円柱状の網の上に取り付けます。この網を水深25メートルほどの海底に沈めること、およそ10分。

イメージ 中に入っているのは、カワハギです。
刺身や煮付けにして食べる魚ですが、寒さが厳しくなるこれからは、肝の部分が人気を呼びます。

イメージ 木村 豊男さん

「結構、刺身にはなるし、肝臓も大きいのが入っている。これから寒くなると需要が増えるけれども、供給が追い付かなくなってくる。」

イメージ カワハギはクラゲが大好物。一度海に沈めると、クラゲのまわりにカワハギが群がります。

イメージ 他の魚もクラゲを食べますが、海の深い方へ逃げようとするカワハギの習性を利用して、網を引き上げようとすると、文字通り、一網打尽にできます。

イメージ 「昔の先人の知恵だね。」
志賀町では、現在、秋から冬にかけて、10隻ほどの船がカワハギ漁を行っています。
4年前にエチゼンクラゲが大発生してからは、もっぱら、エチゼンクラゲを餌として使っています。エチゼンクラゲが来なかった去年は餌を探すのも一苦労だったということです。

イメージ 木村 豊男さん

「エチゼンクラゲは近いところで労せずとれるからね。経済面でも燃料のこと考えてもバッチグーやね。」

イメージ カワハギの水揚げ量は1隻あたり、多い日で200キロ以上にも上ります。
漁業関係者にとって、天敵のはずのエチゼンクラゲを逆に味方につけたカワハギ漁は年明け1月ごろまで続きます。カワハギの餌にするということで漁師の人達のたくましさを感じました。

イメージ さらに、実は今、エチゼンクラゲを中国料理の食材として活用する動きも出てきているんです。
金沢市内にある中国料理店です。

イメージ 美味しそうなアワビのステーキに・・・

イメージ フカヒレの姿煮。

イメージ こうしたおなじみの料理に加えてこの店では、海の厄介物だったエチゼンクラゲを食材に取り入れ、新しいメニューを開発しました。
エチゼンクラゲはこりこりとした食感で、前菜や炒め物に最適だといいます。
12月にも売り出す予定です。

イメージ 中華料理店 代表 魏 賢任さん

エチゼンクラゲを食材として利用しようと考えたのが、代表の魏賢任さんです。

イメージ この日、エチゼンクラゲを使った新しい料理を常連客に試食してもらいました。
「美味しいね、美味しい。ぷりぷり。」
「触感が良いね。美味しい。本当にびっくりするくらい。アレがこんなになるとびっくりするね。」

イメージ 日本では厄介物のエチゼンクラゲですが、中国では一般的な食材として流通しています。日本でもエチゼンクラゲは食材になるはずだと考えた魏さん。
中国で加工技術を学ぶなど、4年前から準備を進めてきました。

イメージ 魏 賢任さん

「こちらのエチゼンクラゲは中国で普通に食べられているクラゲですので、専門の漁もあるくらいです。ところが日本では厄介者にされていて、とても可哀想だと思って、是非日本の皆さんにも美味しく食べていただきたいと思います。」

イメージ 魏さんが店で使うエチゼンクラゲを仕入れているのは、七尾市の鹿渡島漁港です。
定置網業者が水揚げしたクラゲを1kgあたり10円で買い取ります。
一度に仕入れる量は、およそ6トン。金額にすると6万円ほどになります。

イメージ 漁師 酒井 秀信さん

定置網漁ひとすじ38年のベテラン、酒井秀信さんです。8年前から、エチゼンクラゲの発生に悩まされてきました。クラゲの重みで網が破れたり、魚の選別に時間が掛かるなど、苦労の連続でした。まさかエチゼンクラゲに値段がつき、出荷できるとは思わなかったといいます。
「売り上げの足しになる、売れるとしたらもう誰も厄介者とはいいませんよ。このクラゲが最低位でも10円、もう魚と同じですよ。これからね大切に、大切な海の資源としてね、僕らは売り上げの資源として非常に注目というか」

イメージ 水揚げしたエチゼンクラゲは、まず表面の付着物やぬめりを丁寧に取り除きます。
さらに食材として使いやすいように、適当な大きさに切り分けます。
カサの部分が非常に味が良いんですね。グレードもランクも高いんですよ。

イメージ 出荷前には塩をまき、水分を20%にまで減らします。
こうすることで歯ごたえが増し、和え物や炒め物の材料として使えるようになるといいます。

イメージ エチゼンクラゲを使ったメニューを開発した魏賢任さん。
これまで一般的に使われていたクラゲのほとんどは中国から輸入されたもので、カサを減らし、より多く輸出するため水分はわずか5%。
食感を戻すためには、お湯にくぐらせて塩抜きをした上で4時間以上流水にさらす必要があり、下ごしらえが大変でした。
一方、七尾産のエチゼンクラゲは水分が20%。一度お湯にくぐらせて15分ほど水につけておくだけで食感がもどります。

イメージ 「七尾産のやつは水で戻すことができる。だいたい四時間くらい短くなる。」
七尾産のエチゼンクラゲを食材として広めたい。
この日、魏さんは金沢市内で弁当を製造している工場を訪ねました。
サンプルとして、中国産のクラゲと、エチゼンクラゲの両方で作った和え物を用意しました。

イメージ 果たして結果は・・・
「食感は同じようにコリコリとした食感で、多少こちらの方が甘みを感じますね。
是非ともウチのお弁当でも使わさせていただいて・・・」

イメージ 七尾産のエチゼンクラゲが、輸入物と比べても遜色ないとお墨付きをもらいました。
海の厄介物を、料理の材料として活用するこの取り組み。
今後、どれだけ味の良さを認めてもらえるかが課題です。

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魏さんですが、今後は能登半島周辺でとれるエチゼンクラゲを「能登太陽クラゲ」として商標登録し、全国に向けて売り出したいと話していました。
食材としての利用が広がれば、単なる厄介物でしかなかったエチゼンクラゲが海産物として市場で流通する時代がやってくるかもしれませんね。
いしかわGOODニュースでした。
 



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