最近目新しいのは、映画内広告がビジネスに大きな影響を与えるようになったことだ。
2006年は、ボリウッドがブランドの広告メディアとなった年としてインド映画史に刻まれることだろう。業界の推定によると、2006年の映画内広告収入はおよそ8億ルピーに上った。それを受け、低予算映画やアニメーション映画までもがこの潮流に乗って映画内広告を始めている。業界の情報筋によると、映画内広告の収入は2007年に20億ルピーに達し、2010年までに80億ルピーにまでなると予想されている。
かつて映画内広告は散発的に行われてきたが、現在ではプロフェッショナルに行われている。ラージ・カプールが映画内でバイクを映すためにエンフィールドにいくら要求したのか、誰も知らない。だが、「Taal(タール)」において主役のアイシュワリヤー・ラーイとアクシャイ・カンナーがコーラのボトルを一緒に飲むシーンを映すために、スバーシュ・ガーイー監督がコカ・コーラ社に対して1000万ルピーの請求書を送ったことはよく知られている。
同様に、映画の中で商品を映すために、米国のビール製造会社ストローが「Dilwale Dulhaniya Le Jayenge(ディルワーレー・ドゥルハニヤー・レー・ジャーエンゲー)」のプロデューサーに対し一定の額を支払ったし、TIサイクルズも「Jo Jeeta Wohi Sikandar(ジョー・ジーター・ワヒー・スィカンダル)」のプロデューサーに対価を支払った。
では、なぜ企業は、ラジオ、印刷物、テレビなどの伝統的なメディアを捨てて映画を広告媒体として選び始めたのだろうか?ブランド企業のオーナーたちは、もし人気スターが商品を使うシーンが映し出されたら、そのブランドは消費者のさらに深い心理に働きかけることができると感じているからだ。スターとのイメージの融合はブランドの信頼性につながり、消費者へのアピールも増す。
大手出版社やテレビ局の法外な広告料の要求に直面している企業は、映画スターとのイメージの融合に大きな利点を見出している。もしそれらのスターが既にその会社のブランド・アンバサダーであったらさらに好都合である。
スターと商品の融合が売り上げに直結するか否かは、当然のことながら、別の問題である。
しかしながら、差し当たって映画内広告はビジネス界において最もホットなトレンドとなっている。売り上げを別にして、企業は映画内広告に巨額の資金を投じている。
昨年公開されたファルハーン・アクタル監督の「Don(ドン)」では、タグ・ホイヤー、モトローラ、ガニエル、シティバンク、オークレー・サングラス、ルイ・フィリップの商品がプロモートされた。「Dhoom:2(ドゥーム2)」ではコカ・コーラ、ペンズオイル、ペペ、ソニー、ディズニー・チャンネル、シュガー・フリー、マクドナルド、スピード、スズキ・ゼウスがプロモートされた。「Lage Raho Munnabhai(ラゲー・ラホー・ムンナーバーイー)」では、ワールドスペース、IOCL、ゴー・エアー、MSN、グッドデー、クルクレー、ブライト・アウトドア、リライアンス・コミュニケーションズがプロモートされた。
同様に、「Krrish(クリシュ)」はシンガポール観光局、ソニー、ジョン・プレーヤーズ、ボーンビタ、タイド、ヒーロー・ホンダ、ボロ・プラス、ライフボイ、HPパワー、アクロン・ランギーラー、ハンサプラスト、レイズ・チップスをフィーチャーし、クリシュ・マスク、弁当箱、水筒などの関連グッズも発売された。
この「Krrish」のマーケティング戦略は、インド経営大学インドール校経営学部の教科書にケーススタディとして掲載された。
昨年の大ヒット映画「Rang De Basanti(ラング・デー・バサンティー)」も将来的に研究対象となりそうだ。コカ・コーラ社は映画公開前後に同映画仕様の限定コーラボトルを販売した。これは昨年の映画内広告の好例のひとつである。2006年の成功を受け、多くの日用品ブランドや耐久消費財ブランドが今年、商品プロモーションのために映画内広告に参入すると見込まれている。
映画内広告の成長と同時に、映画内広告は今やプロフェッショナルに行われるようになって来ている。脚本が整えられると、プロダクションは内容に支障をきたさず映画にフィットするブランドを選ぶ。そしてブランド・マネージャーが仕事を引き受ける。
映画内広告はすべての参加者が得をするシステムであると言える。映画内広告からの収入は、映画制作費用とプロモーション費用を捻出する資金源となってプロデューサーを助ける。そしてあらゆるチャンネルを通した映画の宣伝にもなる。一方で企業は、ブランド・アンバサダーを通して商品を観客に売り込むことができる。
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