(cache) 【SS】俺達はプロ野球選手だった　コンビニ店長　辻内崇伸さん « なんJ

http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/livejupiter/1363275429/

1: 風吹けば名無し 2013/03/15(金) 00:37:09.94 ID:9wLa7gmR

蝉の鳴き声が耳につく季節にもなれば、日本国民の視線は押しなべて、とある大会へと集中する。
もはや国民的行事と言っても大袈裟では無いほどの催しとなった夏の甲子園大会では、
全国を勝ち抜いた強豪、古豪、新鋭が鍔迫り合い、ドラマが生まれ、そして、ヒーローが生まれる。

あの夏のヒーローを一人挙げろと問われたならば、野球ファンは決まって、あのサウスポーの名前を口にするだろう。

ゆっくりと振りかぶり、右足を上げる。
柔らかく、それでいて大胆なそのフォーム、鋭く振られた左腕から放たれた、唸るようなボールが、外一杯に構えられたミットに収まる。
小さく弾けるような小気味の良い音が響き、心なしかしんとした球場に、審判のコール。
打者がのけぞり、天を仰ぐ。150km/hを超えた電光掲示板の表示に、球場はまた、沸き立った。

辻内崇伸。準決勝で惜しくも苦杯を喫した彼ではあったが、あの夏、人々の注目を最も集めたのは、この男と断言して良いだろう。

4: 風吹けば名無し 2013/03/15(金) 00:38:57.07 ID:rllynAle

やめてあげて

7: 風吹けば名無し 2013/03/15(金) 00:41:42.86 ID:b+/noCLu

リアルすぎやしませんかね（困惑）

3: 風吹けば名無し 2013/03/15(金) 00:38:29.40 ID:9wLa7gmR

マスコミは十年に一人の逸材と囃し立て、評論家は口を揃えて怪物だと評した。
巷ではしばしば海の向こうの名投手、ランディ・ジョンソンになぞらえて、そのピッチングが如何に秀でているかが語られた。

当時の大会記録である一試合19奪三振や、未だに破られていない156km/hの左腕最速記録も、
その評価がでたらめな物ではないことを証明しているようにも見えた。

「長く活躍できる選手になりたいです」

精悍な面構えに、時折、笑顔を湛えてインタビューに答えるその姿は、人々に飛躍を確信させた。

5: 風吹けば名無し 2013/03/15(金) 00:40:13.99 ID:9wLa7gmR

0勝0敗0セーブ、登板数、ゼロ。
これが辻内の通算成績になろうとは、あの時誰が予想できただろうか。

新人王の候補にも挙げられたルーキーイヤーは怪我が続いて一軍のマウンドに登ることは無かった。
二年目には手術をした。その後の丸二年間は、ファームでの登板すらなかった。
ようやく実戦復帰を果たしても、高校時代の辻内は、完全に失われていた。
ストライクが入らない。入っても、力のないボールは簡単に弾き返された。
背負う番号は段々と重くなった。それに反比例するように、その背中にかかる期待は軽くなっていった。

未来のエースとして将来を嘱望された男は、結局、一軍のマウンドにすら、届かなかった。

8: 風吹けば名無し 2013/03/15(金) 00:42:10.81 ID:9wLa7gmR

コンビニ経営を始めると、辻内は寝る間も惜しんで働いた。
レジ打ちをして、掃除をして、売り上げの確認をして、商品の発注量を決めた。
気づけば日が暮れている。毎日のように廃棄弁当を食べて暮らした。

「あいつが生まれてこなかったら、僕はもう駄目でしたね」

激務をこなす辻内の原動力となっていたのは、引退後に誕生した愛息だった。

コンビニ経営が軌道に乗るころには、自分が野球選手であった事など、忘れてしまっていた。
忘れてしまっている、ふりをしていた。

9: 風吹けば名無し 2013/03/15(金) 00:42:23.22 ID:+E+53E4S

ちな巨やけど泣きそう

10: 風吹けば名無し 2013/03/15(金) 00:42:55.61 ID:ojLVh7Vy

おう、やめーや

12: 風吹けば名無し 2013/03/15(金) 00:43:05.27 ID:jTKLnLkc

（アカン）

13: 風吹けば名無し 2013/03/15(金) 00:43:12.09 ID:9wLa7gmR

息子にプロ野球選手になって欲しいかと問うと、辻内は微妙な表情を浮かべた。

笑うでもなく、泣くでもない。
肯定するでもなく、否定するでもない。
そんな、えもいわれぬ表情を浮かべていた。

「こんな親で良かったのかなって思う事も、よくあるんですよ」

遠くに目をやりながら、辻内は言った。
野球選手としての自分と、父親としての自分の間での、激しく、辛い葛藤が、垣間見えた。

21: 風吹けば名無し 2013/03/15(金) 00:45:11.40 ID:9wLa7gmR

「初めて、キャッチボールをしてみようかな、と思うんです」
息子の九歳の誕生日に、辻内は、グローブを贈っていた。
左投げの、ピッチャー用だった。
そのグローブを抱えては、息子が毎日のように公園に通うのを、辻内は知っていた。

急かす息子にボールを寄越すとき、辻内は訊いた。
「俺が父さんで良かったかな。こんな父さんで、良かったかな」

返事の代わりに、小さく唸るようなボールが返ってきた。
辻内のグラブが、小気味の良い音を立てた。小さく弾けるような音が、公園に響いた。
ゆっくりと振りかぶり、右足を上げて、鋭く左腕を振ったその姿は、
あの夏のヒーローに、とてもよく似ていた。

25: 風吹けば名無し 2013/03/15(金) 00:46:22.59 ID:g5CfdgJ5

いかんでしょ・・・

27: 風吹けば名無し 2013/03/15(金) 00:46:50.95 ID:gn1y+vgC

アカン、アカンでぇ…

29: 風吹けば名無し 2013/03/15(金) 00:47:02.62 ID:0eAxkl6G

ど、ドラ1だから球団職員として面倒見てもらえるし・・・

31: 風吹けば名無し 2013/03/15(金) 00:47:49.04 ID:1BASwZ26

おう、バースデイ風のテキストやめーや

35: 風吹けば名無し 2013/03/15(金) 00:48:53.30 ID:gn1y+vgC

プロって厳Cなぁ

50: 風吹けば名無し 2013/03/15(金) 00:52:15.37 ID:9qzKMHys

登板数さえ0で終わるなんて誰も予想しないやろ……