―音楽に興味を持ったきっかけは?
志方あきこ:私は小さいころから母と歌遊びをしてたらしいんです。お腹が減ったとかトイレに行きたいとか、なんでも歌で表現してたようで。なので、音楽を目指すとか興味を持つとかではなく、気づいたら自然にそばにあった感覚ですね。
―どんな音楽を聴いていたのでしょう?
志方あきこ:小さいころは「みんなのうた」でしたね(笑)。本当に大好きで、小学校のころは昼休みにみんな外へ遊びにいく中、私だけ教室に残って歌詞カードを見たりして曲を覚えていました。あと、ピアノを習っていたので、クラシックの音楽は聴いていましたね。
―多重録音による幻想的な世界観という現在の作風にはどうやってたどりついたんでしょう?
志方あきこ:あまり自分で歌うつもりはなくて、曲だけをつくっていたんですけど、宅録をするときに、シンセの音だけでは物足りなくて、ヴォーカルも入れてみたんです。それでも物足りなくてもっと華やかにしようとコーラスも入れてみて。録音環境が貧弱な中、試行錯誤を繰り返しながらいろいろ録り重ねていたら、「あ、おもしろい!」ということになって。エフェクターを使えば、いろいろなコーラスとか機械的なハーモニーを出すことはできるんですけど、どれも予想の範囲内じゃないですか。でも、声を重ねていくっていうのは、重ねるものによって響きはちがうし、何本重ねるかによっても聴こえ方がちがうんですよね。本当の意味での偶然の産物というか。それが化学の実験をしてるみたいで、すごく楽しいと感じるようになったんです。
―本作『Harmonia』のテーマは?
志方あきこ:『Harmonia』は"地"、"水"、"火"、"風"の4つのエレメントが"循環"することをテーマに表現しました。各エレメントの頭に「調和」という曲を入れているんですが、それらが「調和〜Harmonia〜」で重なり合ってひとつの完成を迎える。そして、その後にある「Harmonia〜見果てぬ地〜」で、また物語が始まり、一番最初の曲「調和〜風来の調べ〜」へ戻っていくんです。今作では、全体を通して大きな輪を描ければいいなって思いました。それと、レコ発のコンサートで歌うことも視野に入れて制作しました。多重録音の曲って、あまりコンサートには向かない曲が多いんですよね。だから自分の持ち味である多重録音の部分を活かしつつ、お客さんとコンサートでも盛り上がるような曲もつくりました。
―「うみねこのなく頃に 〜煉獄〜」や「謳う丘 〜Salavec rhaplanca.〜」は、以前に発表されている同タイトルの曲とはかなり変わった印象を受けましたが、主にどのような点をアレンジした?
志方あきこ:「うみねこのなく頃に」はゲームの主題歌で、前につくったヴァージョンは、オープニングに流れることを意識してつくっていたんです。今回は、「うみねこのなく頃に」というひとつのストーリーを時間軸で表現しようと。オープニングの平和的な部分から始まって、事件が起きて、段々と混沌としてきて最終的にはカタストロフィが起きる、みたいな流れを音でつくろうと意識しました。「謳う丘 〜Salavec rhaplanca.〜」は、前作とはまったくの別モノですね。今作は別の物語「Salavec rhaplanca.」というラプランカの伝書を物語のテーマにしてるんですけど、その物語のすべてを歌っていくのでヴォリュームが問題で(笑)。でも、全部歌い終わったあとには、本当にやりきった感がありましたね。
―今作をどのように聴いてほしい?
志方あきこ:このアルバムに収録されている曲は、自分的にも方向性に富んでいると思うので、その日の気分によって聴く曲を変えてほしいです。優しい気持ちになりたい時は"風"のエレメンツを、前に進んで頑張りたいときには"火"を聴いてほしい。それぞれを聴きわけることでその人の活力になれば、それが最高のヒーリングにつながると思います。ヒーリングって、落ち着いたり癒されたりというイメージもまちがいではないんですけど、それだけでもないと思うんです。自分の心が欲している曲を最高のタイミングで聴いていただいて、このアルバムが大きな意味でのヒーリングになったらうれしいですね。
INTERVIEW:Hiroyasu Wakana |
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★志方あきこ
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