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シューカツ新事情−仙台圏の学生たち(上)需給ミスマッチ
 | 地元企業のブースで空席が目立った合同企業説明会(写真は一部加工しています) |
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東日本大震災の影響やソーシャルメディアの普及によって、就職戦線に変化が起きている。地元志向が強まり、新たな情報のやりとりが生まれた一方、就労に関心がない学生も少なくない。新たな就活事情を仙台圏で探った。(報道部・西村悠里)
◎高まる地元志向、空回り
<落差がくっきり> 首都圏に本社がある企業のブースは満席で立ち見の学生がいたが、宮城県内の地元企業ブースは空席が目立った。担当者が「説明を聞いてください」と呼び掛けても、学生に素通りされた。 仙台市で7日にあった就活情報サイト主催の合同企業説明会。その様子は、東日本大震災がもたらした就職戦線の「需給ミスマッチ」と言える状況を象徴していた。 県内企業が不人気なわけではない。むしろ震災後、県内の大学生は「復興に役立ちたい」と考え、地元志向は強まっている。宮城労働局によると、県内で3月に卒業する大学生の就職希望者8346人のうち、県内への就職を望むのは5割を超えた。震災前は4割程度だったという。 だが、県内就職希望者のうち地元企業に内定した学生は昨年11月末現在、4割台にとどまる。県内大学生の内定率6割と比べても低い。地元企業を希望した学生が就活するうちに関心が離れてしまい、県外企業に流れる現状が浮かび上がる。
<ネット情報頼み> 仙台大3年の男子学生(21)は「県内で働きたいが、インターネットで検索しても企業数が少なく、条件も合わない。全国各地の企業を探すしかない」とやりきれない様子だった。 県内の中小企業は従来通り、大学やハローワークに求人を出すことに重心を置いているが、学生の反応はいまひとつ。最近の学生は大学の就職課にあまり通わず、ネットでの就活情報の収集に頼りがちなためだ。 東北学院大3年の男子学生(21)は「大学の求人票では会社の雰囲気など具体的なことが分からない。ネットの方が簡単に詳しい情報が手に入る」と打ち明ける。
<行政が支援強化> 県内企業は採用担当の社員数が少なく、経費を十分に充てられないため、自社ホームページや就活情報サイトを頻繁に更新することが難しい。学生への周知が進まない要因にもなっている。 こうした擦れ違いの解消を目指す動きも出ている。 仙台市と宮城労働局が2月1日、市内で開いた合同説明会。狙いは地元企業の人材確保だ。参加企業27社のほとんどは県内で、学生の地元志向の高まりを受け、約1000人が集まった。 「ネットでは県内企業の情報が入らないので訪れた。説明会は初めて見聞きする企業が多かった」。参加した東北福祉大3年の男子学生(21)はこう振り返った。 市は2月、市内の中小企業を紹介するフリーマガジン「仙台で働きたい!」を創刊した。大学の就職課に置く冊子版だけでなく、専用サイトも設けた。ネットの就活対応に遅れ気味の地元企業の支援態勢を整えた。 市雇用対策室の力石恭彰室長は「震災の復興需要で県内は求人が増えている。県内企業のことをよく知り、企業の選択肢を増やしてほしい」と期待を込める。
2013年03月13日水曜日
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