引き込み線の踏切前で貨物輸送を撮影する鉄道ファン=紀宝町鵜殿で
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JR紀勢線の貨物輸送が十六日のダイヤ改正で事実上廃止されるのを前に、紀宝町鵜殿の北越紀州製紙紀州工場周辺に鉄道ファンが押し寄せている。工場への引き込み線があり、踏切の手動昇降など珍しい作業が見られるとあって、ファンの撮影も過熱気味だ。
紀州工場によると、引き込み線の利用が始まったのは一九五八(昭和三十三)年。線路は鵜殿駅から紀州工場まで約四百メートルで、ほぼ毎日コンテナの出し入れが行われる。引き込み線は非電化で、専用の小型機関車がけん引する。
国道42号と線路が交差する箇所には、今では珍しい手動昇降の踏切が残っており、業務を請け負う運送会社係員がロープを引っ張って遮断機を上げ下げする。引き込み線は十五日で休止し、今後は鉄道によるコンテナの出し入れは見られなくなる。
工場周辺で撮影するカメラマンは、二月まで毎日五人程度だったが、今月に入ってから十〜二十人に増加。一部のファンは、集音器付きのビデオカメラで撮影し、線路音も楽しむという。神戸市から訪れた会社員玉井準一さん(51)は「関西の都市部ではディーゼル機関車は珍しい。紀勢貨物の廃止は寂しい限り」と話した。
町内では今月に入り、鉄道ファンのカメラマンらが撮影場所をめぐって争ったり、線路に立ち入るなどのハプニングが発生。紀州工場の担当者は「撮影の際は、住民や鉄道輸送の妨げにならないようマナーを守ってほしい」と呼び掛けている。
北越紀州製紙は、コスト削減の一環で鉄道輸送分の貨物を船便に切り替えることを決定している。
(小柳悠志)
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