支度部屋でうれしそうに記者の質問に答える千代大龍=ボディメーカーコロシアム
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◇春場所<4日目>
横綱日馬富士(28)=伊勢ケ浜=が平幕千代大龍(24)=九重=に引き落とされ、2004年秋場所の朝青龍以来となる2日連続金星配給で2敗目を喫した。千代大龍は02年名古屋場所の霜鳥以来の横綱初挑戦金星の快挙。横綱白鵬は妙義龍を寄り切り、ただ一人4連勝。大関陣は琴奨菊が高安を下手投げで退けて星を五分に戻し、鶴竜は関脇把瑠都を寄り倒し、ともに3勝1敗とした。稀勢の里は小結栃煌山に突き落とされて2敗目。栃煌山は大関戦3連勝となった。琴欧洲は栃ノ心に寄り切られて1勝3敗。
人気サイトの「2ちゃんねる」でマニアックな人気を誇る千代大龍。本人は「あまり気にしてません」というが、そこでは正攻法が皮肉を込めて奇襲攻撃と書かれ、得意とする引き技を本名の明月院からMSP(明月院スペシャル)と書かれているという。
もちろん安易な引き技は禁物だが、そこに大学4年生から磨きをかけてきた、持ち前の馬力を生かした左からのかち上げが加われば、最強の武器へと進化する。
大関を連破した勢いそのまま。11年5月技量審査場所が初土俵のため、大銀杏(おおいちょう)も結えないまま挑んだ初の横綱戦で物おじすることなくかち上げてから瞬時の引き。昨年春巡業のぶつかり稽古で胸を借り、足首を骨折した苦い経験がある日馬富士を破ると、小さなガッツポーズで喜びを表現した。
「勝ったんだ、金星かって…。気づいたら白鵬関の相撲が終わってました」。取組後の控えで見ていた結びの一番は記憶にない。日体大で学生横綱に輝き鳴り物入りで入門した強者も、この時ばかりは初々しい笑みを浮かべた。
体の異変に気づいたのは昨年の夏。北海道福島町の合宿中だった。「朝になって立ったら尻餅をついた。1時間に1回くらい尿意もある。喉が渇くし」。糖尿病の症状を検索すると「10項目のうち、9項目に当てはまってました」。すぐに病院で検査を受けたが、血糖値は480もあり、すぐに入院するよう指示された。
それまでカルピスを原液7の水3で割っていたが、もちろんやめた。食事も「夜は5合か6合食べてた」ものを、1杯に抑えるようにした。一時的に体重が20キロ近く落ちて148キロになった。
薬や食事制限、水を1日に4リットル摂取することを心がけ、この日は「血糖値は108でした」と落ち着いている。
さすがに前夜は「午前4時半までビデオを見てました。それから携帯電話を30分いじって、寝たのは5時でした」。横綱戦はもう一戦ある。眠れぬ夜がまた来るが、「自分の相撲を取れるよう頑張ります」。勝った自信が、167キロまで戻った千代大龍を、さらに大きく見せていた。 (岸本隆)
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