“米軍基地”募る不安 レーダー配備 京丹後で説明会
航空自衛隊経ケ岬分屯基地(京丹後市丹後町)への米軍「Xバンドレーダー」配備計画が、海沿いの静かな町に、不安と戸惑いを広げている。防衛省による13日までの地元説明で、先行配備された車力分屯基地(青森県)より多い約160人が駐在する正式な米軍基地となり、米軍の特権的な地位を保障する日米地位協定の対象となることが判明した。市民は、安全面の懸念を募らせている。
レーダー配備は北朝鮮情勢を踏まえ、弾道ミサイル防衛を強化する狙いで2月の日米首脳会談後に決まった。日本海側に島や航空路など障害のない経ケ岬を選び、京丹後市や伊根町など関係自治体に防衛省が協力を要請した。市町側は、攻撃を受けるリスクや、健康、治安への影響について懸念を伝えた。
防衛省は11、12日に京丹後市で開いた住民説明会で「人員は最大160人程度で、民間企業の技術者が多数を占める」と述べ、「法制度上、米軍基地という位置づけになる」と説明した。米軍隊員が基地外に住む可能性や、約100人がいる車力基地周辺で米軍関係者による計9件の傷害事件や交通事故があったことも知らせた。
参加者からは「若い女の人や小学生が襲われないか」「事件や事故が起きて風紀が乱れないか」との質問が飛んだ。防衛省は車力基地の例を挙げ、地元町内会や市、米軍との連絡会を設けて規律保持を図る方針と答えた。
だが、住民は治安悪化の不安を拭えない。基地の西3キロの集落に住む会社員田中洋介さん(37)は、小学生の子3人のことを思い、「沖縄の事例もあり、米軍が来るのは心配だ」と表情を曇らせる。基地近くの男性会社員(55)も「この田舎に160人も家族連れで来たら、静かな町が変わってしまう。配備ありきで話が進むのはおかしい」と憤る。
半面、過疎高齢化が進む現状で、基地配備に伴う交付金や雇用の発生、米軍関係者による消費拡大を見込む住民感情もある。同町久僧の男性(54)は「悪影響が心配」と断りつつ、「何らかの形で仕事が生まれ、いい変化があるかもしれない」と期待する。
レーダーの配備時期は「地元の理解を得てから」(防衛省地方協力局)とされ、安全保障に関する国策の調整役を担わされた京丹後市。住民の負担や懸念を考え「防衛上の必要性は理解できるが、とうてい『わかりました』とは言えない」という中山泰市長は「住民の皆さんの声をしっかり聞き、自治体としての思いを固めていく」と、住民の判断を重視する考えを強調している。
【 2013年03月13日 23時30分 】