【春場所】千代大龍、初挑戦初金星！１１年ぶりの快挙

日馬富士を破り、初金星を挙げた千代大龍（右）

　◆大相撲春場所４日目　○千代大龍（引き落とし）日馬富士●（１３日・ボディメーカーコロシアム）　東前頭２枚目・千代大龍が横綱初挑戦で初金星の大仕事をやってのけた。日馬富士を引き落としで倒し、２００２年名古屋場所１３日目の霜鳥以来、１１年ぶりに初の横綱戦で初金星を奪取した。３日目に敗れた高安戦に続き日馬富士は２日連続の金星配給の汚点。関脇・把瑠都に土が付き、横綱・白鵬が唯一の４連勝。４日目で全勝１人は、０１年秋場所以来、１２年ぶりとなった。

　ありったけの力を左腕に込めた。千代大龍は立ち合い、左からのかち上げで日馬富士の上体を起こす。吹っ飛ばされた横綱が、前に出た瞬間に引き落としだ。「勝っちゃったんだ」。両手をついた横綱を見下ろし小さくガッツポーズだ。横綱初挑戦初金星の快挙。「内容より勝てたことが何よりうれしい」。出世に髪が追い付かないちょんまげ姿で声を弾ませた。

　日体大から１１年５月の技量審査場所、幕下１５枚目格付け出しで初土俵を踏んだ元学生横綱は、約２年で自己最高位の東前頭２枚目まで駆け上がり、１横綱２大関を破り３連勝の快進撃。荒れる春の主役に躍り出る活躍にいつもは辛口の師匠・九重親方（元横綱・千代の富士）も「立ち合いの当たりがいい」と合格点を与えた。琴奨菊を下し大関戦初勝利を決めた２日目は１０万円を弟子にプレゼント。この日は「倍出す。うれしい悲鳴だ」と約束。打ち出し後に師匠との食事会に向かった千代大龍は「すぐ貯金します」と感謝した。

　食生活の改善が実った。昨年８月に糖尿病が判明した。一般的に血糖値１２６以上が糖尿病と言われる中、数値は４８０。「糖尿でやめた力士もいる。人生終わった」。落ち込む中、医師と相談し食生活を改めた。ご飯はどんぶりで大盛り６、７杯を１杯に減らし甘い物も控えた。代謝を良くするため毎日４リットルの水も欠かさない。１日２回のインスリン注射は続くが、血糖値は１１０程度に下がり、２０キロ減った体重も１６７キロに戻るなど力強さが戻ってきた。

　５日目は大関・稀勢の里に挑む。「今日の勝ちで自信がついた。８番は勝ちたい」。必殺の引き技は本名の明月院からネット上で「ＭＳＰ（明月院スペシャル）」と呼ばれる。内容よりも勝負にこだわる２４歳がさらなる荒れる春を演出する。

　◆戦後の横綱初挑戦初金星　初めて獲得したのは１９４８年５月場所３日目に照国を破った東前頭２枚目の力道山。以後、２００２年名古屋場所１３日目に武蔵丸を破った霜鳥（のち霜鳳）まで４３人おり千代大龍は４４人目。一方で千代大龍のように出世が早く大銀杏（おおいちょう）が結えずに、ちょんまげ姿で初金星を挙げた力士も過去にいる。最近では、９４年初場所４日目に横綱初挑戦で曙を倒した武双山。９７年秋場所３日目の出島も貴乃花を破り、まげ姿で初金星を挙げた。

　◆千代大龍　秀政（ちよたいりゅう・ひでまさ）本名・明月院秀政。１９８８年１１月１４日、東京・荒川区生まれ。２４歳。九重部屋。葛飾区立大道中、足立新田高を経て、日体大４年時に学生横綱、国体成年個人も制覇。２０１１年技量審査場所で幕下１５枚目格付け出しで初土俵。１２年初、新十両。同年夏、新入幕。得意は突き、押し。１８１センチ、１６７キロ。