開襟シャツ&昭和エッセイ シュガ・プラム・フェアリ  
 
 エッセイ
  当サイトでは気ままに60年代以降の昭和の思い出をエッセイとして綴っています。記憶違いや思い込
 み、うろ覚えで書いたものもあります。ご理解いただいたうえ、お読みいただければと思います。また、
 このような性質のエッセイですので、記述に誤り等ございましたらBBSでご指摘いただけると幸いです。
  紫電改のタカ 戦記物マンガ ’60s
かつての少年雑誌

 現在、コミック雑誌はどのくらいあるのだろう。私たちの世代では、少年サンデー、少年マガジンのから始まり、少年キングそして少年ジャンプ・少年ピャンピオンと続々と新しい雑誌が創刊された。
 その頃、色々なテーマの作品が発表されたが、プロや高校野球を扱った野球漫画、レスリング漫画、少年チームや高校チームを扱ったサッカ

ー漫画、忍者漫画、学園漫画、柔道漫画など、今でも続いているテーマの漫画は少なくない。
 その中で、最近ほとんど見られなくなったテーマの漫画がある。その代表格は、太平洋戦争を背景とした戦記ものの漫画ではないだろうか。 
 映画では現在でも、夏や冬の頃になると年に一・二作新しい作品が公開され、2011年には「聯合艦隊司令長官山本五十六・太平洋戦争70年目の真実」、「一枚のハガキ(新藤兼人監督)」されているが、漫画では最近見ることが少ない。

 昭和40年代の私たち少年は、戦記ものの漫画に心を奪われた。「ゼロ戦はやと」「ゼロ戦行進曲」「大空のちかい」「あかつき戦闘隊」「サブマリン707」「青の6号」といった、戦闘機や潜水艦が中心の作品である。
 戦闘機ものはゼロ戦のパイロットを主人公にした作品が多かった。辻なおきの「ゼロ戦太郎」「ゼロ戦はやと」、相良俊輔・園田光慶の「あかつき戦闘隊」、貝塚ひろ
ゼロ戦はやと あかつき戦闘隊 青の6号
ゼロ戦レッド 紫電改のタカ しの「ゼロ戦レッド」等たくさんの作品がある。その中で、ちばてつやの「紫電改のタカ」は、紫電改のパイロットがスターの数少ない作品だった。
 ゼロ戦ではなく、紫電改がスターだったせいか、それとも、作者が「ちばてつや」だったからかはわからない。あるいは両方のせいかもしれない。とにかく少年時代の私のお気に入りだった。
 戦記ものとはいえ、ちばてつや独特のタッチはこの中に生きていて、主人公の滝とその相棒の久保は、「ちかいの魔球」と同じような設定で、滝は少し真面目すぎる少年で、久保は滝思いのちょっとおっちょこちょいの性格な相棒。
 もう1つのちばの代表作「あしたのジョ
ー」のジョーとは少し設定が異なる。これは、「あしたのジョー」がちばのオリジナルではなく、梶原一騎といった原作者がいるからだろう。
 戦記ものの中で異彩を放つのは、ちばはちゃっかり主人公の滝を思う恋人信子を登場させていること。これが、この作品を特徴的なものにしている一因なのではないか。この2人の思いは、この作品の最後にたった数ページに凝縮されている。滝の大好きなおはぎを持って、大分飛行場まで列車に乗り、滝に会いに行く信子。特攻隊として沖縄琉球海溝に向かう滝。たった数ページに、作者ちばは、恋人2人と時代の悲劇を描いている。しかもあまり、ちばは多くを語らず淡々とした表現をしているのだ。最後にちばはこう語る。「そのころ 滝丈太郎は果てしない大空に飛び立っていった。母を捨て、信子を捨て…… 先生になる夢を捨てて……。 ただ自分の死が祖国日本を救うことになるのだという言葉を信じようと努力しながら……」。このシーンと言葉は、何十年の時を超えて、少年から壮年期を迎えようとする私の中に、未だ鮮明に残っている。
 余談だが、少年キングの創刊号の表紙は「ゼロ戦」と戦艦だったと記憶している。これをテレビで宣伝しているのを覚えている。当時、定価30円! この少年キング創刊号で「ゼロ戦はやと」は連載されている。時代である。

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