ここから本文です

ノムさんの人生が示す、「一流」と「二流」の差

東洋経済オンライン 2月26日(火)8時0分配信

 4番打者の野村に対し、57年までは外角中心の配球をする相手が多かったものの、58年以降は内角を突くボールが増えていた。実際、野村は「強気に攻めてくるな」と感じていた。それを数値に置き換えることで客観視でき、あらためて事実に気づくことができた。そうして生まれたのが「データ」という概念だ。当時は「データ」という言葉はなく、「傾向」と呼ばれていたという。

 「このカウントでは、インコースに投げてくることは100%ないという状況がある。野球は相対関係でできているから。外角に対しての内角。高めと低め。速い、遅い。そういう組み合わせでできている。たとえば、内角を意識させれば、外角を広く使える。今では当たり前になっているけど、当時は誰もそんなことは言っていなかった。精神野球の時代で、気合いだ、根性だ、ばかりだった。でも、データで考えられるようになってから、急に野球が面白くなった」

 長嶋茂雄や王貞治のように圧倒的な力を持つ者なら、自分を中心に考えることが好パフォーマンスへの最短距離になるだろう。しかし、野村のように持てる才能が限られている者は、相手との力関係で上回る創意工夫が必要だ。

■ 技術力だけでは限界がある

 現役引退後、野村が率いたチームはいわゆる“弱小球団”ばかりだった。相手より戦力が劣る中、どうすれば打ち負かすことができるか。野村は現役時代同様、頭をフル回転させた。

 「バッティングでもピッチングでも、技術力には限界がある。わかりやすく言えば、80年の歴史があるプロ野球では4割を打った人が1人もいない。よく打っても3割。7割は凡打。そういう中で少しでも確率を上げていくためには、技術力だけでは難しい。プラスアルファをどう出していくか。技術力プラス、何かを出していく。これが僕の基本的な取り組み方です。ましてや南海を皮切りにヤクルト、阪神、楽天と最下位のチームばかりやらされてきましたから。そうすると選手も同じで、弱者が勝者になろうと思ったら、強者と同じことをやっていたら絶対に勝てない。当たり前のところから発想していくわけです」

 押してダメなら、引いてみる。きっかけをつかめなければ、たどり着きたい結論を見据えて逆算する。商品が売れなければ、消費者の立場に立ち返る。

 そうやって頭を使えば、凡才だって本当の頂点に到達できる。野村の野球人生はそう教えている。

中島 大輔

123次へ
3ページ中3ページ目を表示

最終更新:3月1日(金)9時5分

東洋経済オンライン

 

記事提供社からのご案内(外部サイト)

週刊東洋経済

東洋経済新報社

2013年3月16日号
3月11日発売

定価690円(税込)

Part1 相続増税にはこう備えよ
Part2 税務署にどう対応すべきか
・シャープ生き残りの賭け
・国内リストラが続く自動車部品の苦悩

東洋経済オンラインの前後の記事

 

PR

現金1000万円が当たる! ⇒ 無料
PR

注目の情報


Yahoo!スマホマネージャー
PR