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＜大相撲春場所（4日目・13日）＞またしても、平成世代の成長株が「荒れる春場所」を演出した。２大関を撃破して勢いに乗る平幕千代大龍と横綱日馬富士の結び前の一番。勝負は一瞬で決まった。千代大龍が立ち合いの強烈なカチ上げで先手を取ると、相手が前に出たところで引き落とし。日馬富士は、なすすべもなく両手をバッタリと土俵についた。

　横綱初挑戦で、まさかの初金星。まだ大銀杏を結えない成長株は「いやあ、うれしいっす。内容どうこうより勝てたことがうれしい。勝ったというより“勝っちゃった”という感じ」と無邪気な笑みを浮かべた。日体大から九重部屋に入門。「学生横綱」の看板を引っさげて一昨年の５月技量審査場所で幕下１５枚格付出でデビューした。

　ところが、右下腿蜂窩織炎で途中休場。力士としての道のりは、いきなり挫折から始まった。昨年夏には糖尿病が発覚し、体重は２０キロ近く減った。千代大龍は「甘いものを食べないように。炭水化物も減らしている。（治療の）注射は毎日昼と夜に。酒は一滴も飲んでいない。水を一日４リットル飲んでいる」。

　節制を重ねると同時に、自らの「武器」にも磨きをかけてきた。時に批判の的になる「引き」や「はたき」も、立ち合いの強力なカチ上げがあってこそ。千代大龍は「威力や角度が『ここだ』というのが分かってきた」と上位陣に対する手応えを口にした。北の湖理事長（元横綱）も「引くタイミングがいい。つっかえ棒を外すよう」と舌を巻いた。

　千代大龍は「とりあえず８番勝ちたい」と謙虚な目標を掲げたが、５日目の相手は稀勢の里と再び上位食いの期待は膨らむ。春場所の台風の目になりそうだ。