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2013年3月14日(木)付

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春闘―変化の兆しを本物に

今年の春闘は大きな転換点になるだろうか。前半の山場である自動車や電機の集中回答では、円安・株高を追い風に、一時金要求に満額回答が相次いだ。定期昇給も維持される流れだ。[記事全文]

陸山会判決―政治への不信は続く

以前にくらべ、社会にあたえる衝撃はずっと小さくなった。しかし、民主党のつまずきの石となった事件である。しっかり見届けなければならない。小沢一郎衆院議員の元秘書3人に対し[記事全文]

春闘―変化の兆しを本物に

 今年の春闘は大きな転換点になるだろうか。

 前半の山場である自動車や電機の集中回答では、円安・株高を追い風に、一時金要求に満額回答が相次いだ。定期昇給も維持される流れだ。

 ただ、海外市場への依存が高い自動車・電機産業が国内の賃金相場を牽引(けんいん)するのは限界、といわれて久しい。グローバル化した大企業ほど、円安傾向の中でも海外での生産拡大を続けるのは避けられない。

 流通などの内需産業や中小企業では、これからが賃金交渉の本番だ。ここで賃金の底上げを進め、消費の復調へつなげられるかがカギを握る。

 日本では、サービス産業が雇用拡大の中心になりながら、非正規の低賃金労働が多いため、全体の賃金水準が下がるという特異な状態が続いてきた。欧米との大きな違いだ。

 これを転換する道筋が見えないと「賃金デフレ」の克服は難しいが、その変化の兆しと受け取れる動きも出てきた。

 コンビニ大手のローソンが正社員の賞与に限っているとはいえ、年収3%増を早々と掲げ、流通大手のセブン&アイ・ホールディングスはベースアップを決めた。

 安倍政権の賃上げ要請に背中を押された面もあるようだが、人件費をコスト削減の対象とばかり捉えてきたことへの反省の機運も感じられる。この流れを非正規雇用の待遇改善に広げてほしい。

 1世紀ほど前、大量生産方式を編み出したヘンリー・フォードは大幅な賃上げをし、従業員を自社の「顧客」にして販売を伸ばし、自動車王になった。

 同様に、経営者が賃上げのプラス面に注目し、これまでの日本経済のあり方に持続性があるのか自問し始めたとすれば、今春闘の大きな成果だ。

 力のある中小企業の役割もますます重要になる。独自の技術やノウハウを武器に販路を海外に広げたり、外資の傘下に入ったりした結果、賃金交渉の自由度が増した例もある。

 こうした企業では、大企業との賃金格差を是正し、事業革新と人材強化の好循環を作っていくことが望ましい。

 成長途上の中小企業は雇用吸収力も大きい。待遇改善で大企業などからの人材の移動が促され、中小企業の自立や海外展開が加速すれば、世界に開かれたフラットな産業構造への転換も進むはずだ。

 格差是正と中小企業の成長をしっかりとかみ合わせる。そんな波を起こしていきたい。

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陸山会判決―政治への不信は続く

 以前にくらべ、社会にあたえる衝撃はずっと小さくなった。しかし、民主党のつまずきの石となった事件である。しっかり見届けなければならない。

 小沢一郎衆院議員の元秘書3人に対し、東京高裁は一審に続いて有罪を言いわたした。

 資金管理団体「陸山会」の土地取引にからみ、政治資金収支報告書にうそを書くなどした罪だ。小沢事務所が建設会社から5千万円の裏金を受けとっていた事実も改めて認定された。

 注目すべきは、判決が「報告書には、実際に金や不動産の取引があったときに、その個々の事実にもとづいて収入や支出を書かなければならない」とはっきり指摘したことだ。

 しごく当然の判断である。

 元秘書側は「土地を本登記したのは翌年であり、前の年に金の動きがあっても記載の必要はない」などと主張していた。

 そんなことで、政治資金規正法がうたう「国民の不断の監視と批判」が果たせるのか。「政治活動の公明と公正」を確保できるのか。大切なのは健全な常識をはたらかすことだ。

 事件が残した跡は大きい。

 疑惑がうかんでも、小沢氏は国会での説明をこばみ続けた。強制起訴されたみずからの裁判は、元秘書らとの共謀をうらづける証拠がないとして無罪になったものの、新たにつくった政党は衆院選で大敗を喫した。民主党も有効な手を打てないまま分裂の末に政権を失った。

 多くの有権者が、長く続いた混乱に嫌気がさし、この政治家たちに国の将来を託すことはできないと判断した。その帰結と受けとめるべきだろう。

 問われているのは小沢氏と民主党だけではない。

 事件を機に、政治家本人に責任が及ばないようにできている規正法の欠陥が指摘された。

 だが、それを正そうという動きは鈍い。一連の経緯を単なる「小沢氏変転の軌跡」に押しこめてしまうようでは、政治不信はいつまでも解消されまい。

 検察も痛手を負った。公判を通して、強引な取り調べや事実と異なる捜査報告書の存在が、次々と明らかになった。

 仕事にむきあう心構えを説いた「検察の理念」を定め、改革にとり組むものの、個々の捜査や裁判を通して見える姿に首をかしげることが少なくない。

 「検察は間違いを犯さない」という独善的な体質は、どこまで改まったのだろうか。

 政治と検察。ともに傷ついた両者が、今回の事件から何をくみ取り、姿勢を改めていくか。国民の目が注がれている。

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