東日本大震災で巨大津波とともに世界を震撼させたのが福島第1原発の事故だ。大爆発やメルトダウンの拡大など、最悪の事態は免れたものの、このまま楽観視していいのか。原発問題や内部被ばくに詳しい2人の識者はそろって「NO」を突きつける。そればかりか国の誤った政策により地獄絵図のような最悪の事態も想定されるという――。
「真に恐ろしいのは、国による真実の隠蔽、歪曲。その片棒を担ぐ大手マスコミの報道姿勢だ!」
そう声を大にするのは原発問題に詳しい中部大教授の武田邦彦氏(69)だ。テレビでおなじみの“御仁”ではあるが、過激な発言が物議を醸し、このところは各局で出演NGとなっている。
「番組で『福島の野菜は汚れているので、食べてはいけない』とやったら、やれ不適切発言だと。私は事実を話したまでですよ」
放射能汚染はヒトや家畜、作物、魚介類などすべてに及ぶ。武田氏によると「いまだ原発内は放射線量が高く、作業できない。それを踏まえると、いまも1日数億ベクレルの放射能をまき散らしている」。
だが、こうしたネガティブな話は時間の経過とともに減った。
「それどころか復興の名のもとに『福島の野菜を食べよう』とやっている。イイ話と思ったら大間違い。被ばくの危険のあるものを食べているのは世界を見渡しても日本だけ。北朝鮮や中国より恐ろしいことをやっている」
内部被ばくに詳しい琉球大学名誉教授の矢ヶ崎克馬氏(69)も同意見だ。日本原子力研究開発機構は10日、福島第1原発から半径80キロ圏内の空間放射線量(地上1メートル)が、2011年4月から12年11月までの1年半で全体的にほぼ半減したことを発表。「当初予測より早いペースで着実に減少している」とコメントしているが、とんでもない!
もともと事故で出た主な放射性物質はヨウ素とセシウム134とセシウム137。セシウム137の半減期は30年だが、ヨウ素の半減期は8日、セシウム134は2年で、集計期間に鑑みれば、ほぼ半減するのは「当たり前のこと」(矢ヶ崎氏)。むしろこのタイミングでデータを発表したことに何らかの意図を感じる。
さらに同氏はある重大な疑惑についても言及する。「そもそも空間放射線量を測定するモニタリングポストに過小評価の疑いが出ています。実際、私たちが国際基準に沿った検出器で計測したところ、数値は2倍でした。つまり公表されているモニタリングポストの値は実際の半分ほどの線量しか示していないということになります」
内部被ばくの問題でも、国のずさんさが明らかになっている。
「チェルノブイリの事故の時は周辺3か国が、年間の被ばく量上限を1ミリシーベルトとして、それを超える地域では国が移住を保証しました。5ミリシーベルトを超える地域については『住んではいけない』『農業生産もしてはいけない』としました。それが日本では逆。『良くなったから地元に帰っておいで』と言わんばかりの対応です。原発80キロ圏内の年間被ばく量は5ミリシーベルト近くに達しているのにです」
チェルノブイリ事故では強制退去となる地域に、日本ではいまだ100万人規模で住んでいることになる。
前出の武田氏は「こんなことをやっていたら、子供の甲状腺がん、セシウムに起因した心臓疾患はどんどん増える。人間より外気に触れる機会の多い動物のなかには、すでに奇形の赤ちゃんが次々と生まれている」と語る。数年後にそれが人間の身にも降りかかってくることは火を見るより明らかだ。
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