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'13/3/13

過疎地でタクシー業者消える




 中国地方5県の山間部や離島でタクシー業者の廃業が相次いでいる。人口減少に伴う減収や後継者難で2007年度以降、「平成の大合併」前の旧10町村が、業者のいない空白地帯になった。緊急時の移動や通院を支え、町村営バスの運行も担う交通手段に、ほころびが出始めている。

 中国運輸局などの調べでは07年度以降、5県の法人タクシー37事業者が廃業した。以前から空白地帯の旧35町村に加え、旧吉和村(現廿日市市)旧旭村(同萩市)旧美星町(同井原市)などからタクシー業者が消えた。

 今月末には、島根県邑南町の旧羽須美村で唯一の羽須美タクシーが廃業する。同町下口羽の高齢者施設で暮らす野田フミ代さん(79)は週1回、膝の治療で1・2キロ先の病院に通うため同社のタクシーを利用してきたが、新たな移動手段探しに迫られている。

 同社は町営バス7路線の運行も受託している。同社の三上壌一社長は「古い営業車を買い替えないといけないが、人口減少で費用を捻出できない。後継業者もいなかった」と明かす。

 廿日市市の旧吉和村には市内の2社が拠点を設けたが、08年10月までに両社とも撤退。1995年2月〜08年3月に車庫を置いた佐伯交通の担当者は「地元の要請で進出して、児童を送迎した時期もあった。人口減で最後は客がいない日もあった」と振り返る。

 名古屋大大学院の加藤博和准教授(交通・環境計画)は、自動車メーカーが販売台数の少ないLPガスタクシー車の生産終了を検討している点を指摘。過疎化に伴う減収に加えて車両購入費などのコストが上がり、今後は廃業がさらに進む可能性があるとみる。

 「ドア・ツー・ドアのタクシーは本来高齢者が多い過疎地に適した移動手段。乗り合い方式の導入など、効率的な経営へバス同様に行政や住民を交えて話し合い、補助する仕組みが必要」としている。

【写真説明】病院から高齢者施設に帰り、羽須美タクシーから降りる野田さん




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