専門家ゲスト:井田典子さん(相模友の会)
ゲスト:室井佑月さん、六角精児さん
リポーター:内藤裕子アナウンサー
夏休みまっただ中。ただでさえ主婦は何かと忙しいのに、子どもたちも家に居て、ペースが乱れてしまい、やるべき事が終わらない、はたまたやりたいことが出来ない。1日が、成果無いままいつの間にか終わっている空しさを、感じることはありませんか?主婦の時間は何も決めなくてもいいので自由、そう思いがちですが、実は何の縛りもない時間は、かえってストレスになることもあるのです。
そこで、暮らしのノウハウや理想を追求し続けている「友の会(雑誌『婦人之友』読者の集まり)」の、50年にわたる「全国一斉時間調べ」のデータの蓄積から培われた、時間の使い方の極意をお届けします。
今回のスーパー主婦は、相模友の会の井田典子さん。「時間は意識」だという井田さんが、有意義に毎日を過ごすノウハウや心構えを伝授しました。
「時間がない」をいいわけに、なかなかやるべき事に着手できないこともありがちな話。井田さんは、「時間は実はある」といいます。仕事も持ち友の会の活動もしながら、家事も完ぺき。そんな井田さんですが、「忙しい」と思ったことはありません。どんなに予定が立て込んでいても、今に集中していれば、忙しくはないのです。身体は1つ。「今」はひとつのことしかできません。でも、頭の中で先のことを危ぐしたり、危ぶんだりしていて、今していることに加えて頭の中が忙しくなっているので、「忙しい」と感じるのです。「今」に集中する暮らしが出来れば、その時その時を充実させ、結局は色々なことを並行してやるよりも時間を有効に使えると言います。
家中、どこにいても、すぐ視界に入る位置に時計を配置している井田家。すぐ時間がわかることにより、「まだこれだけ時間がある」という安心感を得られることからそうしています。特に、玄関に時計は必須で、家を出ようと向かった時にすぐ目に付く位置に置けば、子どもに出かける時間を連呼してせかさずとも、子ども達も自発的に出かけられるようになると言います。
例えば、特に子どもの学校関係からが多い、いつ何があるというようなイベントのお知らせなどが届いたら、必ずチェックするカレンダーに日時と項目のみ書き込んで、そのお知らせは目に付かないところ(家族別に作ったフォルダ)にしまってしまいます。カレンダーに書いた時点で自分はそのことは忘れて頭の中をスッキリ、今に集中。内容を確認する時にだけプリントを出します。
友の会では50年前から、5年ごとに「全国一斉時間調べ」を行い、会員全員が、1週間程度、自分の24時間何をしていたかを記録します。こうして記録するだけで、家事のやり方や、家族と過ごす時間の取り方、自分の時間の過ごし方など、無意識にしていた行動が目に見えるようになり、思わぬムダも見つかります。
時間の使い方を工夫することで、イライラが減り、不安もなくなります。ただ、そうして出来た自分の時間のうち、少しでも多く社会のために役立つことに使えるようになることが井田さんの目標です。
友の会では、「6つの基本時刻」という考え方があり、これを意識することが大事だとされています。6つの基本時刻とは、「起床」「就寝」の1日の区切り、そして「朝食」「昼食」「夕食」の食事時刻、そして最後の1つが「朝仕事終了」です。
朝、起きてから、昼食までの間で、「これくらいはやっておきたい」という家事(多くは食器洗い、掃除、洗濯物を干すなどと思われます)をここまでに終わらせると決めた時刻です。
この時刻を決めれば、昼食との間に時間の線引きができ、やるべき事の時間と、自由にできる時間が分かれます。守れなくてもいいので、ともかく自分で決めた朝仕事終了時刻に家事を終えるようにやってみます。これは、どの行動も境目があやふやなまま、達成感無く時間が過ぎていくことを防ぐための第一歩です。
朝仕事終了時刻を決めるだけでもいいのですが、できれば6つの基本時刻を決めて、やるべき事をその6つの仕切りの間に当てはめていくのがお勧めです。
効率を求めようと、ながら仕事や、並行仕事をするよりも、1つ1つやることを終わらせていく方が時間のムダが減ります。
「ひと仕事ひと片づけ」
・集中できるのでミスが減る
・移動時間が減る
・”二度書き”の無駄がなくなる
→家事の時間が短縮!
どうもやりたくなくて滞る家事があったりしたら、一度自分の動きをイメージしてみるといいかもしれません。慣れてしまっていて気づかないことが多いのですが、家事をするのが億劫で放置されてしまう裏には、行動にムダに長い距離が必要だったり、途中に障害物があるなどの、物理的な障害があることもあります。
こうした問題を解決することが、家事の滞りを減らすことにつながります。
ポイントは、衣・食・住の3つを見直すこと。
・「衣」:洗濯取り込みからアイロンかけ、しまうまで。
よくあるのは、アイロンをかける場所。衣服をしまう場所より取り込む場所に近い方が効果あり。
・「食」:買い物から調理片づけまで。
よくあるのは、鍋と調理器具の数。多いと、探す手間がかかります。
・「住」:掃除道具の置き場。あちこちに置かず、1か所にまとめるのがお勧め。
色々な形、色、用途のものが、ごっちゃになって置いてあると、視界から来る情報が多く、それが「忙しい感」を増幅させることもあります。頻繁に使わないものはしまっておいて、視界をスッキリさせるのも集中を高めるひとつの方法です。
午前中がいちばん頭も身体も働く時。なので、精神力がいる仕事は午前中に組むのがお勧めです。
午前中だと思ったより早く首尾良く終われます。これを「金の時間に金の仕事」と呼んでいます。午前中が金だとすると、昼間は銀、夜は銅で寝る前は鉛の頭に。特に夜に面倒な仕事をもちこんでも能率が落ちます。
「金の時間」の午前中をいかに過ごせたかで、1日の充実感が左右されると井田さんは言います。
洗濯物を取り込んでからしまうまで、食器片づけ、トイレ掃除、窓ふき、など、ついつい後回しにしたくなるような仕事は特に、一度それにかかる時間を計っておくのがお勧めです。やりたくないことは、時間も多く見積もりがち。頭の中で重く感じて後回しにしてしまいがちです。実際はかって時間を知れば、残っている時間と照らし合わせてやれるべき時に済ますことが出来ます。
朝起きて、床にものが転がっている、テーブルの上に食器が残っている、流しに洗い物が残っている、となると、1日のスタートを、「マイナス家事」から始める羽目になります。
そのため、寝る前に、翌朝の気持ちいいスタートのためにこうしておこう、という状態を決め、それを「寝る前の家」として夜に確認することがお勧めです。
また、我が家の「寝る前の家」を決めたら、紙に書いて、家族でそれを共有しましょう。
例えば「明日の着替えを決めておく」でも「ゴミをまとめて玄関に置いておく」でも、何でもいいので、家族と一緒に決めて、共に実践できるようにすると、毎日の充実につながります。
井田家では毎年、夏休み期間だけのカレンダーを手作りして、日付を横軸、家族5人を縦軸にして、全員の予定が一目でわかるようにしてきました。これをすることで、家族の予定が誰にも一目りょう然なので、自分の1日の行動をイメージしやすくなります。また、夏休みのどの時点に今きたのかも一目でわかるのもいいところ。後にこれは家族の思い出記録にもなるし、子どもが成長した今でも「また作ろうよ」と言われているそうです。
雑誌『婦人之友』の読者による、暮らしの情報交換や研究・実践を行っているう会。
「全国友の会」は80年の歴史があり、およそ2万人の会員がよりよく暮らし、社会に貢献することを目指して活動を行っています。日本各地に支部があり、井田典子さんは神奈川県の「相模友の会」の所属です。
『全国友の会』
電話:03-3971-9359 (火曜日・金曜日の午前10時~午後4時)
ホームページ:http://www2.ocn.ne.jp/~zentomo/
『相模友の会』
電話・ファックス:042-742-0071(火曜日・木曜日・金曜日に通じます)
ホームページ:http://www8.ocn.ne.jp/~sagamito/