環太平洋連携協定(TPP)をめぐる日米両政府の事前協議で、日本が目指すコメなど農産品の輸入にかける税金(関税)の維持はこれまで議題にされておらず、今後も取り上げない見通しであることが分かった。複数の政府関係者が明らかにした。
事前協議は、TPPへの参加を各国に認めてもらう「入場審査」の手続き。日米は昨年二月に始めた。先の日米首脳会談の共同声明では、日本は農産品、米国は自動車を守りたい品目として確認。これに沿って米国側は事前協議で自動車関税での譲歩を迫るが、日本側が目指すコメの関税など「聖域」の維持は主張できていない。本交渉に向けて、自動車と引き換えにコメを守るという日本の当てが外れる恐れがある。
政府関係者は「今回の事前協議は、米政府が対日強硬派が多い米議会を説得するための材料を引き出す場になっている」と指摘。米国側は日本のコメの関税を問題視しているものの、強硬派の多い自動車などを先に解決しようとしている。
政府には、自動車で米国に譲歩する代わりにコメなどの関税を維持し、「きちんと国内に説明できる状況をつくらないといけない」(茂木敏充経済産業相)との見方がある。しかし、コメなど日本が「聖域」とみなしている農産品の関税保護の交渉は、事前協議がなければ、ぶっつけ本番に近くなる。
安倍晋三首相が近く参加表明したとしても、日本の参加国入りが認められるのは早くて七月ごろ。さらに初の交渉会合の場は九月になる見通しだ。
政府はそれまでは、TPPの参加十一カ国に対し、それぞれ非公式に情報収集を進める予定だ。ただ、米国をはじめ各国が関税撤廃に向けてどんな対日要求をするのか、正確な内容を把握できない懸念を抱えている。
別の政府関係者は「本番の交渉でも、日本が米国の自動車関税で譲ったとしても、米国がコメで妥協するわけではなく、交換条件にはならないのではないか」と述べた。
(東京新聞)