【給食の放射性物質検査】難題多く自治体苦悩 国の支援足りず 保護者「全食材測って」
検査機器不足で全量検査は不可能、食前の検査公表も困難...。学校給食の放射性物質検査態勢の構築を急ぐ県内の自治体関係者の苦悩は尽きない。保護者らの不安払拭(ふっしょく)に向け、さまざまな課題が突き付けられている。
■限界
「今の検査態勢では、1校の食材を全て調べることは難しい」。福島市は昨年11月、他市に先駆け市内4つの給食センターに放射性物質検査器を1台ずつ配置したが、担当者の表情はさえない。
文部科学省が定めた学校給食衛生管理基準により、給食用生鮮食材は調理当日の搬入が基本。そのため、検査は調理と並行し、午前中に実施している。
食材は1日当たり10~15品目あるが、検査は1品目ごとに15分余かかる。食材が届けられる午前9時半から配膳準備の午前11時までに検査できるのは6品目が限度となる。担当者は「測定器をもっと増やしたいが、自治体独自では経費が掛かり過ぎる」と、国の支援を期待する。
機材不足の悩みは、11日から検査をスタートさせるいわき市も同様だ。稼働している5つの学校給食共同調理場のうち平南部、小名浜、常磐の3調理場に民間から寄贈された検査器を1台ずつ設置した。三和の調理場には国から貸与された1台が配備されており、4台態勢で対応するが、全ての品目を測定することは難しい。
こうした実情に、子どもを持つ母親らの不安が消えない。小学生と幼稚園児の子ども3人を持つ福島市の主婦(35)は訴える。「不安を少しでも和らげるために、全ての食材を測るべき。親は給食の安全性を信頼するしかないのだから」
■認識の溝
郡山市が放射性物質検査機器を配備する郡山市総合地方卸売市場。市は昨年12月、調理後の給食の放射性物質検査を開始した。2月に給食専用の検査機器2台を導入することにしているが、給食への不安を取り除くため、農家の農産物検査の合間に調べている。
市内の中学校計24校の給食を作る給食センター2カ所で週1回、調べている。自校給食の小中学校65校分は4校ずつ順番に測定している。結果公表は検査翌日で、万が一、放射性物質が検出された場合、既に食べた後になる。
「これが現状では最善の手」。市教委の担当者は強調する。給食は放射性物質が検出されず流通している食材を使用していることを指摘し、「測定はあくまでも不安を払拭するため」とする。
市の意気込みに反し、保護者らからは不満の声が寄せられている。市内の女性団体役員は「食べる前に結果が分からないと、検査をしている意味がない」と語る。市と保護者らの認識の溝は埋まっていない。
■逆転現象
自校給食の小規模校では、実際に給食で食べる分よりも、検査に使用するサンプルの量が多いという"逆転現象"が起きている。
福島市の大波小は児童と教諭合わせて約30人分の給食を用意している。1日数百グラムしか使わない食材も多い一方で、市で所有する検査器は食材1品につき1キロが必要となる。
検査用の食材費は1日5、6000円程度で、市が負担している。市の担当者は「多くの食材が検査のため廃棄処分となる。安全のためには仕方がないが...」と頭を悩ませている。
【背景】
県は文部科学省の平成23年度第3次補正予算を受け県学校給食会に貸与するため12月補正予算で500万円の検査機器2台の購入を決め、発注した。さらに、国は24年度当初予算に学校給食の事後検査の補助金を計上。各市町村は1カ所程度ずつ学校や給食センターを選び、この補助金を活用して毎日の給食を検査機関に委託し分析する。
(カテゴリー:3.11大震災・断面)