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時給800円と8万円――仕事をしていて、なぜ100倍もの差がつくのか

Business Media 誠 3月13日(水)11時53分配信

時給800円と8万円――仕事をしていて、なぜ100倍もの差がつくのか

自分の得意分野を“混ぜて”、1万人に1人の存在になることが大切(写真と本文は関係ありません)

仕事をしたら“10年後のサラリーマン”が見えてきた(中編):
 マクドナルドの時給は800円、マッキンゼーのシニアコンサルタントは時給8万円――仕事をしていて、なぜ100倍もの差がついてしまうのか。リクルートで働き、中学校の校長を務めた藤原和博さんに、その謎を解説してもらった。

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●「レアカード」になれ

土肥:前編で、藤原さんはこのような話をされました。「今後、サラリーマンの給料は『二極化』する。年収は200万〜400万円、800万円以上の人になるだろう」「年収800万円以上をもらうためには『情報編集力』を身につけなければいけない」と。

 日本経済が成長していた時代のサラリーマンは「情報処理力」があれば、メシを食っていくことがでました。でも、今後は違う。正解はひとつではない時代なので、人と人の脳を結びつけることで、自分が考えてこなかった“答え”を導きだせるチカラ――つまり「情報編集力」が必要であるとも話されました。

 ではその情報編集力を身につけるには、どうすればいいのでしょうか?

藤原:「レアカード」になれば、いいんですよ。

土肥:レアカード?

藤原:いまの20代の人たち……ひょっとしたら30代前半の人たちもポケモンカードで遊んでいたかもしれません。ポケモンカードで遊んだことのある人だと分かると思うのですが、希少価値の高いレアカードは魅力なわけですよ。つまり、自分自身をレアカードにするという感覚をもてるかどうか。これがものすごく大事になってくるでしょう。

 例えば「年収」について語るとき、私は「時給」で語らなければいけないと思っています。マクドナルドでアルバイトとして働くと、時給は800円ほど。夜だったら1000円くらい。コンピュータのプログラムを組める人は時給1000円は超えるし、ゲームのプログラムを組めたら2000円を超える人も多い。

 ところで、サラリーマンの時給はいくらくらいか分かりますか?

●サラリーマンの時給

土肥:5000〜6000円くらいかな。

藤原:給料から労働時間を割ると、多くの人は3000〜5000円くらいなんですよ。家庭教師でサラリーマン並みの時給をもらっている人は多い。そう考えると、サラリーマンの時給って高くない。

 会社の取締役になったAさんは、年収2000万円もらっている。身を粉にして、年間4000時間(月20日働いて、労働時間は1日16〜17時間)働いたとすると、時給は5000円。朝も夜も働き続ける……といった生活ですよね。常務取締役から「Aさん、すぐに来てください!」と呼び出されたら、飛んでいかなければいけない(笑)。

 高度な専門技術をもった人で、時給は1万〜3万円くらい。弁護士が3万円くらいですね。ちなみにマッキンゼーで働くシニアクラスのコンサルタントは時給8万円ほど。

土肥:おおー。

藤原:このように考えると、日本人の時給は800円から8万円くらいの幅がある。なぜ100倍もの差が生まれるのか。100倍の差があるには、ワケがあるんですよ。

土肥:ど、どんなワケですか?

藤原:中学校でも同じような授業をしたことがあるのですが、自分のナニを変えると時給が800円から8万円になるのか。中学生に聞いたところ「大変さ」「社会貢献度」といった答えが返ってきました。でも、そういったことではないと思っています。「大変さ」だったらマクドナルドのアルバイトの仕事も大変。「マッキンゼーのコンサルタントが一番大変」と言えるかもしれませんが、そうとも言えない。結局のところ、“レアであるかどうか”だと思うんですよ。

 時給というのは、需給の相場で決まってしまう。どのくらい希少性があるのか。医者や弁護士の時給は3万円、世界の経営者にインパクトを与えるコンサルタントは極めてレアなので、時給8万円をもらっている。そのレアさをどのように演出していけばいいのか。こういったことについて、学校では教えません。親も教えません。せいぜい「弁護士になれ」「医者になれ」といった程度のことしか言いませんよね。

●自分の戦略を考える際、大事なポイントは2つ

土肥:でも弁護士も医者も数が増えてきて、レアではなくなってきています。今後10年間で、どんな職業がレアな存在になってくるのでしょうか。

藤原:そうした問いかけがものすごく大切になってくるんですよ。自分の戦略を考える際に、大事なポイントが2つあります。1つめは、逆張り。みんなが行く方向ではなく、逆の方向に進むということですね。

 例えば、道の先にリンゴの樹があるとします。一緒に歩いている人たちはリンゴを食べたいのですが、道は2つに分かれている。そのときどちらの道を選択すればいいのか。もし全員が右の道を選んだときには、左の道を進めばいい。なぜならみんなについていって、リンゴの樹があったとしても、分け前は1〜2個かもしれない。足が遅かったら、その分け前すらもらえないかもしれない。

 左の道を進んでいけばどうなるのか。大きなリンゴの樹があるかもしれない。そうしたらすべてのリンゴを独占できる。リスクはあるかもしれませんが、逆張りをしていかなければ大きなリターンは得られないでしょうね。

土肥:ハイリスク・ハイリターンを選択せよ、ということですね。では、レアな存在になるための、もう1つのポイントはなんでしょうか。

藤原:「レアな存在になれ」と言われても、10万人に1人、1万人に1人の存在になることって難しいですよね。例えば、いまからiPS細胞を研究して、山中伸弥教授を越えることは難しい。20〜30年黙々と研究を続ければ山中教授を追い越すことはできるかもしれませんが、その可能性はものすごく低い。それほどの時間をかけても、教授に追いつけるのは1万人に1人……いや、100万人に1人もいないかもしれません。

 1万人に1人の存在になることは難しいことですが、100人に1人だったらかなりの確率でなれると思うんですよ。例えば、パチンコをするのかどうか、電車の中で寝ているのか本を読んでいるのか。こうした違いだけでも、2分の1、4分の1……となっていき、すでに25人に1人になっている。このように考えると、100人に1人になることはそれほど難しいことではないんですよね。

 仕事が終わってから英会話学校に通ったり、資格試験の勉強をしている人は、ひょっとしたらもう100人に1人になっているかもしれません。でもここで終わってしまうと、1万人に1人というレアな存在にはなれません。

●自分の得意分野を“混ぜる”

土肥:では、どうすればいいのでしょうか?

藤原:もうひとつの100人に1人になることが大切になってくるんですよ。考え方としては「100人に1人×100人に1人=1万人に1人」ということですね。

 ひとつの領域で1万人に1人の存在になることは、ものすごく難しい。ところがふたつの領域を混ぜて、「100人に1人×100人に1人=1万人に1人」になることはそれほど難しくはありません。掛け算をすることで1万人に1人の存在になる……これが情報処理力でもあるんですよ。

 例えば、Aさんは「お笑い芸人になりたい」と思っているとします。しかし、明石家さんまさんを越えるためには10万人に1人、100万人に1人の存在にならないといけません。またAさんは「美容師にもなりたい」と考えているとします。カリスマ美容師になるには、10万人に1人、100万人に1人の存在にならないといけません。そこでAさんはお笑い芸人として100人に1人の存在になって、かつ美容師として100人に1人の存在になれば、「お笑い美容師」というカテゴリーができてしまう。つまり「自分で混ぜて」つくってしまうんですよ。

 これからの10年間で、サラリーマンは何らかの領域で100人に1人の存在になるだけではなく、もうひとつの領域でも100人に1人の存在になってほしい。ただし、他人がつくった土俵で戦うのは難しい。自分の得意分野を混ぜて、自分だけの土俵をつくることがポイントですね。

 ところで、Business Media 誠の読者は何歳くらいの人が多いのですか?

土肥:読者アンケートによると、平均年齢は30代半ばですね。

藤原:30代半ばのサラリーマンだと、多くの人が会社の中で100人に1人の存在になっていると思う。「自分はこの領域で、会社の誰にも負けない」といった感じで。みんなもっと自信をもってほしい。1000人に1人、1万人に1人の存在になれるように、チャレンジしてほしいですね。

 ただし、ひとつの領域で勝負をして、45歳までに結論が出ない人は注意が必要です。どういうことかというと、そこで負けてしまうと復活が難しいから。20代で負けても、別の領域で這い上がることはできますが、年を重ねれば重ねるほど、敗者復活が難しくなる。

土肥:年齢のリスクがあるわけですね。そのほかに、なにかありますか?

藤原:ありますね。サラリーマンにとって、最大のリスクがあるんですよ。

土肥:そ、それは……?。(次回、3月20日掲載予定)

[土肥義則,Business Media 誠]

最終更新:3月13日(水)11時53分

Business Media 誠

 

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