姉を刺殺したとして殺人罪に問われ、一審・大阪地裁の裁判員裁判で発達障害の一種、アスペルガー症候群の影響を認定され検察側の求刑懲役16年を超える懲役20年の判決を受けた無職、大東一広被告(42)の控訴審判決で、大阪高裁の松尾昭一裁判長は26日、「障害の影響を正当に評価していない」として、一審判決を破棄し、懲役14年を言い渡した。
精神障害者や知的障害者の犯罪が社会問題となる一方、刑務所での長期収容を避け、福祉施設などで更生させる受け皿づくりが全国的に進んでいる。今回の司法判断はこうした犯罪の処遇のあり方について改めて社会に課題を投げかけている。
昨年7月の地裁の裁判員裁判の判決では、同被告の反省は不十分で、母親らが社会復帰後の同居を断るなど「社会的な受け皿が用意されていない現状では、再犯の恐れがある」と判断。「長期間刑務所に収容することが社会秩序の維持にも資する」として懲役20年が相当とした。
控訴審判決で松尾裁判長は、大東被告は障害を周囲に気づかれず、適切な支援を受けられないまま約30年間にわたり引きこもり生活をしていたと指摘。「犯行の経緯や動機形成には被告のみを責めることができない障害が介在しており、量刑判断で考慮されるべきだ」と述べた。
さらに、十分に反省態度を示せないのは障害の影響で、再犯可能性を推認させる状況ではないと判断。社会の受け皿についても「地域生活定着支援センターなどの公的機関による一定の対応があり、受け皿がないとはいえない」と求刑を超える懲役刑を言い渡した一審を破棄した。
判決によると、大東被告は2011年7月、大阪市平野区で、姉(当時46)の言動が自分への嫌がらせと一方的に恨み、包丁で多数回刺して殺害した。
日弁連は一審判決後、「刑事施設での治療や矯正プログラムが不十分な実態からすれば、長期収容によって発達障害が改善されるとは期待できない」などとする談話を発表した。
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