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「発達障害に厳罰」破棄 懲役20年を14年に

 自宅を訪ねてきた姉(当時46歳)を刺殺したとして殺人罪に問われ、1審・大阪地裁の裁判員裁判で広汎性発達障害の「アスペルガー症候群」を理由に求刑を4年上回る懲役20年を言い渡された無職大東一広被告(42)(大阪市平野区)の控訴審判決で、大阪高裁は26日、1審判決を破棄し、懲役14年を言い渡した。松尾昭一裁判長は、犯行に至る経緯や動機には障害が大きく影響したと指摘し、「刑事責任は低減される。更生への意欲も認められる」と述べた。

 判決によると、大東被告は小学5年の頃から自宅に引きこもり、自立を促す姉に恨みを募らせて犯行を計画。2011年7月、腹などを刺して殺害した。

 昨年7月の1審判決は、障害に対応する受け皿が社会になく、再犯の恐れが強く心配されるとし、「許される限り長期間、刑務所に収容することが社会秩序維持につながる」とした。

 これに対して松尾裁判長は、犯行には意思疎通が困難なことなど同症候群に特有の障害が影響したとし、「被告のみを責めることはできず、量刑判断にあたって相当程度、考慮されるべき事情だ」と判断。

 さらに、元受刑者の社会復帰を支援する「地域生活定着支援センター」などを挙げて、「公的機関による対応がなされている。被告も更生への意欲を示している」と結論付けた。

 1審判決に対しては、障害者支援団体などから「差別を助長する」などの批判が相次いだ。

 判決後、大東被告の弁護人らが記者会見。辻川圭乃(たまの)弁護士は「障害を理解してもらったことは評価したい」とする一方、「同種事案に比べてもまだ量刑は重い。障害のある人を社会から隔離・排除しないという方向を明確にしてほしかった」と注文を付けた。

 アスペルガー症候群 生まれつきの脳機能障害のため、対人関係の構築や意思疎通、感情のコントロールなどが苦手とされるが、犯罪などの反社会的行動とは直接結びつかないとされる。

2013年2月27日  読売新聞)
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