１１年３月、熊本市のスーパーで清水心（ここ）ちゃん（当時３歳）が殺害された事件を巡り、福岡高裁であった１日の控訴審第１回公判。殺人罪などに問われ、熊本地裁で無期懲役判決を受けた山口芳寛被告（２２）が控訴したことに対し、法廷で意見陳述に立った心ちゃんの父誠一郎さん（４１）は「命をもって償いたいと言った１審での言葉は自己保身のためのうそだった」と非難した。山口被告からは改めて謝罪を表す言葉は出ず、控訴審は即日結審した。

　山口被告側は控訴趣意書で、小児性愛の精神症状があったことを理由に事件当時は責任能力がなかったと主張。被告人質問で、山口被告は「自分は精神障害があると考えているのに、それが考慮されていない判断だったのが理解できず、控訴した」と述べた。山口被告側は、１審で証人尋問した精神鑑定医を再尋問するよう求めたが、高裁は却下した。

　誠一郎さんは意見陳述で、隣の被告人席に座る山口被告に対し、「自分のしたことがどんなに残酷なことか。最後くらい、その責任を取ってください」と訴えた。

　誠一郎さんは公判終了後、福岡市内で記者会見。「控訴審では反省している面も見えず、被告には、悪かったという気持ちがみじんもないと感じた」と話した。今月３日で事件から２年。「事件以来、うちにとって、ひな祭りの日は心の命日になってしまった。毎年、１週間前になるとつらい気持ちになる」と現在の心境を語り、「高裁でもしっかりとした判決をもらいたい」と訴えた。【遠藤孝康】