ミニ解説(097)

21世紀の新農薬(5)−クロチアニジン−

クロチアニジンは、住化武田農薬(旧武田薬品工業)が開発したニトログアニジン系殺虫剤である。同社が既に 開発し、1995年に上市したニテンピラムと同じくネオニコチノイド系殺虫剤である。先行品のニテンピラムに比べて殺虫スペクトルが 広く、低薬量でも高い殺虫力を示す。

クロチアニジンの化学名は、(E)-1-(2-クロロ-1,3-チアゾール-5-イルメチル)-3-メチル-2-ニトログアニジンである。 図のように、クロロチアゾール基とニトログアニジン基を持っている。この殺虫剤の作用機構は他のネオニコチノイド系殺虫剤と同様に、 昆虫の神経細胞の接合部において、ニコチン作動性アセチルコリン受容体に結合し、神経の異常興奮を引き起こし、虫を死に至らしめる。

クロチアニジンは、1995年から国内で公的な試験が開始され、2001年に国内で初めて農薬登録された。当初は、芝の コガネムシ幼虫防除用の殺虫剤としてであったが、その後適用が拡大され、現在はイネ、果樹、野菜、茶、花などのりんし目害虫(シンク イムシ、ハモグリガなど)、半翅目害虫(ウンカ、ヨコバイなど)、アザミウマ目、甲虫目(イネミズゾウムシ)、双し目(ハモグリバエ など)を対象にして”ダントツ”の商品名で販売されている。商品数も増えて現在は混合剤も含めて37剤が上市されている。混合剤では、 フェリムゾン、プロベナゾールなどとの混合剤がいもち病との同時防除剤として発売されている。施用法も、散布剤、育苗箱剤、種子処理 剤など多様な処理方法に対応している。

クロチアニジンの特長は、ネオニコチノイド系の中では蒸気圧が比較的低いので、シックハウス症候群などのリスク が低い。そのため、家屋などでのシロアリ駆除剤としてマイクロカプセル剤が市販されている。クロチアニジンの蒸気圧は、同じネオニコ チノイド系殺虫剤のイミダクロプリドに比較して約1500分の1と言われる。

クロチアニジンのラットに対する急性経口LD50は、5000mg/kg以上であり、急性経皮LD50は、2000mg/kg以上 である。又、ラットの体内では速やかに吸収され、糞尿中に排泄される。臓器蓄積性も認められていない。魚毒性も極めて弱い。

海外では、韓国、台湾、米国、欧州、東欧など20カ国以上で登録済である。主としてバイエルクロップ サイエンス 社と共同で海外展開している。

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