出生前診断:初の実態調査へ 13年度に厚労省研究班
毎日新聞 2013年03月12日 11時02分(最終更新 03月12日 11時18分)
田村憲久厚生労働相は12日の閣議後記者会見で、胎児の異常を調べるため妊婦が受ける出生前診断について、国として初めて実態把握に乗り出す方針を明らかにした。4月にも新型出生前診断が始まるのに合わせ、羊水検査や母体血清マーカー検査など現在行われている出生前診断全般について、年間件数と、どのような説明やサポートが行われているかなどを調べる。来年度に研究班を発足させ、医療機関や検査会社などに協力を求める。
出生前診断は国内では60年代後半に始まり、99年に当時の厚生省厚生科学審議会の専門委員会が「母体血清マーカー検査についての見解」をとりまとめた。しかし、それ以降のルール作りに国は直接関与せず、日本産科婦人科学会(日産婦)をはじめとする学術団体や、各研究者に委ねてきた。
妊婦への説明などカウンセリングの内容も各医療機関に任されており、実態は分かっていない。昨年タレントの東尾理子さんが、出生前診断と認識せずに母体血清マーカー検査を受けていたことをブログなどで公表していた。
今回、国が調査を始める理由について田村氏は「出生前診断について全般のことを、そろそろ一定の範囲の中で検討する時期にきている」と述べた。
ただし、出生前診断を受けた後に妊婦が人工妊娠中絶を選択したかどうかについては「センシティブな問題で踏み込むつもりはない」として調査しない考えを示した。【斎藤広子】
◇出生前診断
胎児の異常の有無を調べるために妊婦が受ける検査。現行では妊婦の血液に含まれる成分を調べる母体血清マーカー検査▽腹部に超音波をあてて画像を調べる超音波検査▽腹部に針を刺して胎児の染色体を調べる羊水検査や絨毛(じゅうもう)検査が行われている。4月からは採血だけの新型出生前診断が導入される見通し。胎児に異常が見つかった場合、妊婦が人工妊娠中絶を選ぶ可能性があるため「命の選別」などとして、倫理的な問題が指摘されている。