首相官邸の社会保障制度改革国民会議は何をしているのか。ことしに入ってからの議事運営をみていると、そう言わざるを得ない。
会議は民主、自民、公明の3党合意にもとづき、衆院解散後の2012年11月末に当時の野田佳彦首相が発足させた。会長の清家篤慶応義塾長をはじめ、15人の有識者委員の人選は3党の総意だ。
これまでに野田政権のもとで2回、安倍政権になってからは4回開いた。だが会議に「制度改革」を冠したのとは裏腹に、改革を前へすすめる議論は低調だ。
それは議事運営が各種の利害関係団体の意見聞き取りに終始しているからだ。2月19日は経済団体と労組団体、28日は知事会、市長会、町村会と財務省の財政制度等審議会が意見表明した。次は医療・介護7団体、次々回は健康保険の関連4団体が登場するという。
年金、医療の制度改革を議論し実行する際に利害団体の意向を理解しておくのは当然だ。しかし毎回のように意見聴取のための会議を、わざわざ官邸で開く必要があるだろうか。各団体の意見表明の持ち時間は10分程度にすぎない。意を尽くせない面もあろう。
各団体の考えをしりたいなら、会議とは別の場でそれぞれの委員が主体的に勉強すればよい。そもそも社会保障の「有識者」なら、あらかじめ利害団体の考え方を熟知していて当然だろう。時間稼ぎしているとしかみえないのだ。
会議は3党が成立させた社会保障制度改革推進法によって設置期限が8月21日に区切られている。今国会で13年度予算案が成立すれば、夏の参院選へ向け政界は与野党間の対立機運が高まるだろう。だからこそ官邸主導で改革の方向を早くさだめておく必要がある。
たとえば年金改革は(1)自公両党の百年安心プラン(2)最低保障年金をつくる民主党案(3)維新の会が掲げる積み立て方式への移行案――の利点と足りない点を比較考量するなど、加入者と受給者の視点での改革論議がいる。首相に議事運営の立て直しを求めたい。
野田佳彦、清家篤、国民会議
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