企業収益の先行きに明るさが見え始め、長らく抑制傾向にあった賃金が増加に転じる兆しが出てきた。春の労使交渉は13日、自動車など大手製造業で会社側から労働組合に一斉に回答があり、一時金の額を昨年より引き上げる企業が相次いだ。
企業が収益を伸ばすことで働く人の所得が増え、それが消費を活発にして企業のもうけがまた拡大するという好循環をつくらなくてはならない。
トヨタ自動車、日産自動車、ホンダや三菱重工業などが、昨年の妥結額を上回る一時金要求に対して満額回答した。トヨタでは定期昇給と一時金を合わせて組合員の年収が5.5%増える見通しだ。日立製作所も一時金が昨年実績を上回った。
セブン&アイ・ホールディングスが傘下の主要企業でベースアップ実施を決めるなど、流通業で出てきた賃金引き上げの動きが製造業にも広がり始めた格好だ。
賃金を安定的に増やしていくには企業が競争力を高める必要があり、新事業への進出などの経営戦略が重要になる。M&A(合併・買収)や研究開発に資金を有効活用する経営者の手腕が問われる。
そのうえで労使が連携して取り組む課題がいくつもある。事業再編で成長性の高い分野に社員を移していくことが求められ、そのためには会社と労組が意思疎通を密にすることが欠かせない。
社員の生産性を高めるため、仕事の成果に応じて報酬を決める処遇制度改革も進めなければならない。外国人などを採りやすくするうえでも、日本企業にまだ色濃い年功制は改める必要がある。グローバル化による競争激化で、社員の英語力や専門性の向上などの能力開発も課題だ。教育訓練のあり方も労使で議論を深めたい。
こうした積み重ねで企業の競争力が高まれば、正社員だけでなくパートなど非正規社員の賃金も底上げしやすくなる。働く人の35%を占める非正規社員の処遇改善は消費拡大を後押しする。
政策面では企業が活動しやすくするための規制改革が求められる。医療・介護や農業、エネルギー分野などでは、企業の参入を阻んでいたり、事業活動の範囲を狭めていたりする規制が数多い。
規制改革会議などで規制の撤廃・緩和を推進すべきだ。政労使がそれぞれの役割を果たすことがデフレ脱却の流れを本物にする。
トヨタ、ホンダ、セブン&アイ・ホールディングス、三菱重工業、日産自動車、日立製作所
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