海外投資ラボ

ヘッジファンドの実態調査

1. 世界のヘッジファンド市場

1-(1) 運用資産残高と資金フロー

  • 1990年以降、ヘッジファンドの資産規模は拡大し続けている。Hedge Fund Researchの推計では、2007年末時点の運用資産残高は、約1.9兆ドルと過去最高。
  • ヘッジファンドの資産規模は世界の金融資産全体の1%程度だが、成長のスピードが速いこと、レバレッジを考慮した実際の取引額は運用資産残高の2.5〜3.5倍と言われている。
ヘッジファンドの資産運用残高、資金流出入額の推移
ヘッジファンド市場への資金流出入に関する最新の新聞報道
  • Hedge Fund Research の推計では、2007年の資金流入額は、1-3月期、4-6月期、7-9月期、10-12月期がそれぞれ642億ドル、587億ドル、451億ドル、265億ドルと、サブプライム問題が顕在化した第3四半期以降、やや減少している。ただし、年間でみれば1945億ドルと過去最高。(日経金融新聞2007年10月26日、9面)
  • Eureka Hedgeの推計では、07年に日本を除くアジアに投資するヘッジファンドには224億ドルの資金が流入したのに対し、日本資産に投資するヘッジファンドからは77億ドルの資金が流出した。(日本経済新聞2008年2月5日、7面)

1-(2) ヘッジファンド数の推移

  • ヘッジファンド数は一貫して増加傾向にある。Hedge Fund Researchの推計では、2007年3月末時点のヘッジファンド総数は9575本。
  • 新設本数は、2002年以降、毎年1000本を超えている。2005年には総本数8661本のうち、新設本数が2073本と約4分の1に及ぶ。
  • 一方、精算本数も増加傾向にある。収益機会に限りがある中で多数のファンドが新設されていることにより、ファンド間の生存競争が激しくなっているとの指摘がある。
ヘッジファンド総数の推移
ヘッジファンドの新設・清算本数の推移
­ 総数(a) 新設本数(b) (対総数比)(b)/(a) 清算本数(c) 清算本数の対新設
本数比* (c)/(b)
1996 2,781 507 (18.2%) 109 21.5%
1997 2,990 261 (8.7%) 52 19.9%
1998 3,325 450 (13.5%) 115 25.6%
1999 3,616 348 (9.6%) 57 16.4%
2000 3,873 328 (8.5%) 71 21.6%
2001 4,454 673 (15.1%) 92 13.7%
2002 5,379 1,087 (20.2%) 162 14.9%
2003 6,297 1,094 (17.4%) 176 16.1%
2004 7,436 1,435 (19.3%) 296 20.6%
2005 8,664 2,073 (23.9%) 848 40.9%
2006 9,462 1,518 (16.0%) 717 47.2%
2007 (Q1) - 251 - 138 55.0%
2007 (Q2) - 358 - 166 46.4%
2007 (Q3) - 255 - 105 41.2%

1-(3) ビークル、投資マネージャーの所在地

  • 世界のヘッジファンドの約3分の2が、ケイマン諸島やヴァージン諸島に籍を置くオフショアファンドである。これらの地域はタックス・ヘイブンであるほか、ファンドの設立が非常に容易であることが、多くのファンドを惹きつける要因となっている。
  • 投資マネージャーは、規制や税制の他、ビジネス環境等を勘案して拠点地を決定すると言われる。現時点では、アメリカやイギリス、アジアでは香港やシンガポールが多い。
ビークルの所在地別割合(2005年3月時点) 投資マネージャーの所在地別割合(2005年3月時点)

1-(4) 投資主体の変遷

  • 1990年代のヘッジファンドの主な投資主体は、裕福な個人投資家であった。
  • 最近は、投資家の機関化が進み、年金基金や企業、大学等による投資が増えている。
ヘッジファンド投資の資金源

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