この人が首相だったのか…
エネルギー問題で、「笑えない笑い話」を取材の中でいくつか聞いたので紹介したい。笑った後で背筋が寒くなる恐怖にとらわれるという意味だ。未確認の噂だが東電筋の人から聞いたので、確度は高いだろう。
菅直人前首相は、何度も事故の起こった福島第一原発を視察し、思いつきによる指示と対応で事故復旧活動を妨害した。そこで事故施設の訪問者に義務づけられている線量検査をしようと社員が近づいたところ、「無礼者」と追い払ったそうだ。そのために誰も近づけず、菅直人氏は福島第一原発訪問者で、唯一被曝線量検査をしていない人らしい。彼が法規違反で注意を受けたら笑える。
今まで、健康被害を受ける人ほどの線量を浴びた人はいないが、菅氏は大丈夫だろうか。東電の職員に人間として当然の言葉「ありがとう」を言えない人格に欠陥のある人が、首相であったようだ。
菅氏は、原発事故後の3月15日東京電力に乗り込んで、事故対応に追われる東電幹部前に1時間ほど演説した。東電の公開した映像資料で、菅氏の映像だけは公開されている(写真)。東電は「音声はない」としてそれを公開していない。おそらく音声はあるはずで、ウソであろう。
東電の人によれば、この演説で菅氏は狂乱しており、長い演説は何を言っているか分からなかったそうだ。説教を受けた後で東電の幹部たちは、「いったい彼の指示は何だったのか」と、官邸側に確認したという。しかし官邸スタッフも答えられなかったそうだ。
出席者の感想を聞いた。ドイツ映画の「ヒトラー最後の12日間」でヒトラーが狂乱する場面がある。日本では「総統閣下シリーズ」ということで、ギャグ場面につくりかえられ有名になった(写真)。それを思い出すような狂乱ぶりだったそうだ。
東電は、反響を怖れて「ウソをついてあげた」のだろう。しかし民主党は壊滅し、菅氏も過去の人になったのだから、もう配慮する必要はない。音声を公開して菅氏の政治生命にトドメを刺してもいいのではないか。
東電は事故を起こした点で批判されるべきだが、それには過剰な攻撃が数多くあった。菅氏は「権力による企業リンチ」の危険を認識することなく、自分がその先頭に立つという異常な行動をした。菅氏も当然批判されるべきであろう。
東京電力は原発から冷却に使った汚染水を海に投棄した。11年5月に海に流すとき、福島第一原発の職員らの間では、決定をした会議の後で、「福島の海を汚してしまった」と嗚咽が広がったという。冷却の放水によって汚染水が出ることは自明だった。東電、学会は3月時点から、現在つくられているような水の循環による原子炉の冷却を提案した。
ところが菅首相は、11年3月から4月の段階で、彼が現場の細かな作業で最終決済をすることを求めた。菅氏は素人なのに専門家を聞いて歩き、2カ月がムダにすぎた後に決定したそうだ。汚染水の問題は菅氏にある程度の責任があるようだ。
こうした菅直人氏によるミスは、枚挙にいとまがない。調べればもっと大量に出て来るだろう。今、彼は各所で弁解と、反原発活動に忙しいようだ。こんな人が首相だったのだ。
選挙のための「原発ゼロ」--政治家たちもダメだった
民主党の政治家が相次いで、回顧録を発表している。いくつか流し読みした。読んで面白くなく、過去の人たちなので、読者には勧めない。その中で、エネルギー政策で原発を維持するという現実的な対応を主張した仙谷由人前議員の回顧を読み、筆者は悲しくなった。
仙谷氏のところに、古川国家戦略大臣、枝野経産大臣が「主張しないと選挙に負けますよ」と説得に頻繁に来たという。ここで2つの感想をいだいた。この人らは選挙のために原発ゼロを考えていたことを確認できた。そして実際の選挙では有権者は原発ゼロに関心を示さなかった。民主党の政治家の民意への感覚が鈍すぎる。
もちろん、これまでの原子力政策には大量の問題があった。一方で原発を動かすメリットもある。こうした幅広い観点から問題を議論しなければならないのに、民主党政権内ではその形跡がない。
事故を起こした東電、監督官庁の経産省、原子力安全保安院は批判されるべきだ。だからといって、その蓄積を全部たたき壊して、素人が原発事故の指揮をとり、エネルギー政策を感情と選挙で決めていた。福島の事故原因の調査はさまざまな機関が行っているが、「事故後」の調査もするべきであろう。民主政治が衆愚に陥る教訓に満ちている。
自民党への提言--民主党の失敗を表に出してほしい
総選挙で誕生した自民党政権は野党暮らしで、賢くなった。「安全運転」に徹している。かつてあったような政権内のごたごたは影を潜め、スキャンダルをした政治家を隔離。そして夏の参議院選挙に勝つばらまきと景気回復に焦点を絞った政策を行っている。所属議員の発言も、よく教育されているためか、とても慎重だ。
ただし自民党の議員も霞ヶ関の賢い官僚も分かっているだろうが、別の方法がある。民主党政権のトンデモぶりを、一度整理して、表に出してはどうであろうか。品位を落とさない形で、事実を正確にならべるだけでいい。私が簡単に示したように、常識では考えられない行動をする人々が政権を動かしていた。それを示せば、選挙には有利に働くだろう。
エネルギー・原発政策を観察、取材していた私は頻発したトンデモ政策を見て「ばかばかしさに笑った後で背筋が寒くなる恐怖」に繰り返し遭遇した。そして民主党政権の悪しき遺産は今でも残る。民主党のつくった原子力規制委員会は、活断層で騒いで全国の原発を止め、電力会社を倒産に追い込もうとしている。原発停止によって12年度は国民負担が、エネルギー費用で3兆円も増加し、貿易赤字が拡大している。
私たちがエネルギーに関して必要なことは、安く、安定して、エネルギーを自由に使える体制をつくる事だ。原発をめぐる多様な意見は尊重するが、今の原発は重要なエネルギー源であることは否定できない。それを代替策もなく、いきなりつぶす「トンデモ」政策に、私は批判を続ける。民主党政権はそれを首相から議員まで主張をした。トンデモはおそらく、エネルギーだけではないだろう。
「民主党の亡霊」を抹殺することさえできれば、エネルギー問題は冷静な議論が行え、正しい答えにたどり着きやすくなるだろう。日本国民は、民主党の政治家が想像していたような愚かな人々ではない。冷静で聡明な人ばかりなのだから。
石井孝明 経済・環境ジャーナリスト ishii.takaaki1@gmail.com
@ishiitakaaki
エネルギー問題で、「笑えない笑い話」を取材の中でいくつか聞いたので紹介したい。笑った後で背筋が寒くなる恐怖にとらわれるという意味だ。未確認の噂だが東電筋の人から聞いたので、確度は高いだろう。
菅直人前首相は、何度も事故の起こった福島第一原発を視察し、思いつきによる指示と対応で事故復旧活動を妨害した。そこで事故施設の訪問者に義務づけられている線量検査をしようと社員が近づいたところ、「無礼者」と追い払ったそうだ。そのために誰も近づけず、菅直人氏は福島第一原発訪問者で、唯一被曝線量検査をしていない人らしい。彼が法規違反で注意を受けたら笑える。
今まで、健康被害を受ける人ほどの線量を浴びた人はいないが、菅氏は大丈夫だろうか。東電の職員に人間として当然の言葉「ありがとう」を言えない人格に欠陥のある人が、首相であったようだ。
菅氏は、原発事故後の3月15日東京電力に乗り込んで、事故対応に追われる東電幹部前に1時間ほど演説した。東電の公開した映像資料で、菅氏の映像だけは公開されている(写真)。東電は「音声はない」としてそれを公開していない。おそらく音声はあるはずで、ウソであろう。
東電の人によれば、この演説で菅氏は狂乱しており、長い演説は何を言っているか分からなかったそうだ。説教を受けた後で東電の幹部たちは、「いったい彼の指示は何だったのか」と、官邸側に確認したという。しかし官邸スタッフも答えられなかったそうだ。
出席者の感想を聞いた。ドイツ映画の「ヒトラー最後の12日間」でヒトラーが狂乱する場面がある。日本では「総統閣下シリーズ」ということで、ギャグ場面につくりかえられ有名になった(写真)。それを思い出すような狂乱ぶりだったそうだ。
東電は、反響を怖れて「ウソをついてあげた」のだろう。しかし民主党は壊滅し、菅氏も過去の人になったのだから、もう配慮する必要はない。音声を公開して菅氏の政治生命にトドメを刺してもいいのではないか。
東電は事故を起こした点で批判されるべきだが、それには過剰な攻撃が数多くあった。菅氏は「権力による企業リンチ」の危険を認識することなく、自分がその先頭に立つという異常な行動をした。菅氏も当然批判されるべきであろう。
東京電力は原発から冷却に使った汚染水を海に投棄した。11年5月に海に流すとき、福島第一原発の職員らの間では、決定をした会議の後で、「福島の海を汚してしまった」と嗚咽が広がったという。冷却の放水によって汚染水が出ることは自明だった。東電、学会は3月時点から、現在つくられているような水の循環による原子炉の冷却を提案した。
ところが菅首相は、11年3月から4月の段階で、彼が現場の細かな作業で最終決済をすることを求めた。菅氏は素人なのに専門家を聞いて歩き、2カ月がムダにすぎた後に決定したそうだ。汚染水の問題は菅氏にある程度の責任があるようだ。
こうした菅直人氏によるミスは、枚挙にいとまがない。調べればもっと大量に出て来るだろう。今、彼は各所で弁解と、反原発活動に忙しいようだ。こんな人が首相だったのだ。
選挙のための「原発ゼロ」--政治家たちもダメだった
民主党の政治家が相次いで、回顧録を発表している。いくつか流し読みした。読んで面白くなく、過去の人たちなので、読者には勧めない。その中で、エネルギー政策で原発を維持するという現実的な対応を主張した仙谷由人前議員の回顧を読み、筆者は悲しくなった。
仙谷氏のところに、古川国家戦略大臣、枝野経産大臣が「主張しないと選挙に負けますよ」と説得に頻繁に来たという。ここで2つの感想をいだいた。この人らは選挙のために原発ゼロを考えていたことを確認できた。そして実際の選挙では有権者は原発ゼロに関心を示さなかった。民主党の政治家の民意への感覚が鈍すぎる。
もちろん、これまでの原子力政策には大量の問題があった。一方で原発を動かすメリットもある。こうした幅広い観点から問題を議論しなければならないのに、民主党政権内ではその形跡がない。
事故を起こした東電、監督官庁の経産省、原子力安全保安院は批判されるべきだ。だからといって、その蓄積を全部たたき壊して、素人が原発事故の指揮をとり、エネルギー政策を感情と選挙で決めていた。福島の事故原因の調査はさまざまな機関が行っているが、「事故後」の調査もするべきであろう。民主政治が衆愚に陥る教訓に満ちている。
自民党への提言--民主党の失敗を表に出してほしい
総選挙で誕生した自民党政権は野党暮らしで、賢くなった。「安全運転」に徹している。かつてあったような政権内のごたごたは影を潜め、スキャンダルをした政治家を隔離。そして夏の参議院選挙に勝つばらまきと景気回復に焦点を絞った政策を行っている。所属議員の発言も、よく教育されているためか、とても慎重だ。
ただし自民党の議員も霞ヶ関の賢い官僚も分かっているだろうが、別の方法がある。民主党政権のトンデモぶりを、一度整理して、表に出してはどうであろうか。品位を落とさない形で、事実を正確にならべるだけでいい。私が簡単に示したように、常識では考えられない行動をする人々が政権を動かしていた。それを示せば、選挙には有利に働くだろう。
エネルギー・原発政策を観察、取材していた私は頻発したトンデモ政策を見て「ばかばかしさに笑った後で背筋が寒くなる恐怖」に繰り返し遭遇した。そして民主党政権の悪しき遺産は今でも残る。民主党のつくった原子力規制委員会は、活断層で騒いで全国の原発を止め、電力会社を倒産に追い込もうとしている。原発停止によって12年度は国民負担が、エネルギー費用で3兆円も増加し、貿易赤字が拡大している。
私たちがエネルギーに関して必要なことは、安く、安定して、エネルギーを自由に使える体制をつくる事だ。原発をめぐる多様な意見は尊重するが、今の原発は重要なエネルギー源であることは否定できない。それを代替策もなく、いきなりつぶす「トンデモ」政策に、私は批判を続ける。民主党政権はそれを首相から議員まで主張をした。トンデモはおそらく、エネルギーだけではないだろう。
「民主党の亡霊」を抹殺することさえできれば、エネルギー問題は冷静な議論が行え、正しい答えにたどり着きやすくなるだろう。日本国民は、民主党の政治家が想像していたような愚かな人々ではない。冷静で聡明な人ばかりなのだから。
石井孝明 経済・環境ジャーナリスト ishii.takaaki1@gmail.com
@ishiitakaaki
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