METAL GEAR SOLID 決戦の農場
1vs1のVS OPSが題材です。
スネークなどの本編に登場するキャラクターは一切登場しないのであしからず。
俺はADM65の引き金を引いた。M16系統のライフルとは桁違いの反動が、激しく肩を揺さぶる。コンテナの陰から体を出していた敵を狙う。
タスタスッと数発は下草が生えている地面を抉ったが、数発は敵に命中したはずだ。呻き声が聞こえたかと思えば、またコンテナの陰に隠れてしまった。今日の戦闘は緊張感にあふれている。もちろん戦闘で緊張感に欠けるときはないのだが、今回は1対1でなおかつ相手はラインメタル社製のMG3を装備している。いくらソ連製のボディアーマーとヘルメットに身を包んでいても、7.62mm NATO弾を喰らって平気でいれる確証はない。
「っけ。まだ生き延びてやがる」
敵が姿を現さないのを確認して再び俺は角材の山に身を隠す。5m程度の木材が横に積まれており、膝をついて姿勢を低くすれば何とか隠れられないこともない。しかし手榴弾を投げ込まれたら、との懸念もあるがこの敵が手榴弾を装備してきたことはない。
頭を出したり、ひっこめたりを数秒おきにくり返して様子を探る。相変わらず動く気配は感じられない。
俺は意を決して距離を詰めることにした。MG3に近距離で撃ちあいになると勝ち目はないが、MG3は反動が異常に強い。ADM65はいくらAK系列といえどもリコイルバッファのおかげでM16程とは言えなくとも、かなり反動は抑えられている。
ブーツで湿った土を蹴り上げて一気に前にでる。ある程度ジグザグに歩きつつ、フィールドの中央に廃棄されている戦車の残骸まで駆け抜ける。敵は足音で気付いたのか、MG3で阻止攻撃を行ってきたが幸いなことに一発も被弾することはなかった。
「ふぅ」
一息つく。まずは一安心だ。
俺の感覚があっていれば、敵があのコンテナから移動した様子はない。彼の行動パターンは大体読めている。攻勢に出て有利なときは積極的に動いてくるが、一旦逆襲を受けて攻撃が破砕されたと思うと一転して防勢に。それが彼の行動だ。最初の1キルこそ彼に奪われたが、今は俺が積極的に動いている。主導権は俺が握っている。
俺はグレネードポーチから破片手榴弾を取り出し、安全ピンを抜き、大きく放物線を描くように投げる。コンテナの真後ろに落ちるはずだ。そして手榴弾の爆発音と、悲鳴を合図に一気に飛びだしコンテナと距離を詰め、AMD65を肩にあて射撃姿勢のまま回り込む。
吹き飛ばされた敵は態勢を整え近くのトタン製の小屋に逃げ込もうとしていたが、この距離で逃がしたりはしない。7.62x39mmの弾丸は敵の体を抉り、貫き、地面に沈めた。
これで2キル。キル数の上では優位に立ったが、多少被弾している俺と新しく全回復して再出現する敵と戦うと、こんどはHPの都合で向こうが勝つ可能性が高い。
「ハッハー!ざまぁ」
俺はそう高々に吠えると、自分の陣地に戻る。別に義務はないが、ある程度距離を取っていた方が自分としては戦いやすい。
俺が最初の角材の裏に潜むと、足音を立てないように左側の丘に登り始めた。俺は武装をWA2000に切り替える。これはドイツ、ワルサー社製のセミオートマチックの狙撃銃である。精度はボルトアクションライフル程でさらにその重量ゆえに反動も少なく、連射も可能という優れたライフル。しかしその、7kgの重量と一丁の価格が7000ドルと高額であり、170丁程度しか生産されていない隠れた名銃である。
ニーリングで構え、スコープを覘く。そして頭にクロスバーを合わせる。そして引き金をゆっくりと引いた。
ダンッと鋭い音が空気を割いた瞬間、敵の頭蓋骨が弾けてその場に倒れる。これで3キル。あと1キルでこの勝負は片付く。
再びADM65に持ち替え再びリスボーンしてくるのを待つ。しばらくするとサラウンドインジケータが敵の陣地の方で物音を感知し始めたが敵の姿は見えない。きっと右側、低地側に位置するトタン小屋から進出してくるつもりだろう。
その場を動かずに破片手榴弾を手に持つ。自慢ではないが、この手榴弾や投擲系の武器の扱いは得意なほうだと自負している。10発投げたなら、7発は相手に被害を与えることができるはずだ。
このトタン小屋は、壁に密着して建てられておりその壁に接している側の両方に入口が開いている。正面も背後も視界に収めながら、手榴弾を片手にジッと待った。
するとM16を装備した兵士がコソコソと動き始めた。最初は壁に身を隠しながら警戒していたが、そのうち相手もWA2000を構えスコープ越しに索敵を始めた。俺は好機と見て、グレネードを投げつけた。これもちょうど壁の裏側に落ちて、避けようとしたとしても確実に被弾するはず。
爆発と同時に小屋の入口に吹き飛ばされたので、すかさずADM65を打ち込む。指切り射撃で3点バーストのように扱う。数発直撃弾を送り込めたが、殺傷にはつながらず起き上がって小屋の奥に逃げ込まれてしまった。残りの弾丸は彼が倒れていたあたりのコンクリートを抉っただけだった。
この時俺は勝利を確信した。激しい移動と、緊張感で滲み出た汗で湿ったバラクラバの内側で思わず口元が緩むのを感じた。
次の瞬間、激しい銃音が響いた。
まさにズバババババというのが正しいような銃声。小さな砂煙が土の上を一直線にかけてくる。それを感覚で感じて、とっさに頭をかがめる。次の瞬間、角材を7.62mm NATO弾が抉る音が鼓膜を激しく叩き、そして俺の背後のトタンの壁を甲高い音で叩きつける音が響いた。
頭の中でまだフライパンを鉄の棒か何かで叩きつけるような甲高い音が反響して、頭痛を生む。
なんとか視界を確保すると、細かい木屑が待っていて目がチクチクと痛む。その涙が滲む視界の奥でラインメタルMG3を構えたリーフの迷彩服に身を包んだ兵士がコンテナの影から体を出したりしていた。きっとどの程度の被害を与えたのかを確認しているのだろう。俺はまだ回復しきっていない視界を頼りに、ADM65を構え、一瞬だけ立ち上がって3発だけ撃ちこむ。ダメージを与えようとは思っちゃいない。ただ敵をコンテナの裏に一瞬でも釘づけにできればいい。俺の最初のスタート地点のコンテナはもう少し後ろで、これは壁にめり込んだような構造の小屋で入口は正面のみで、壁一面を取り払ったように広々としている。
「くそ、油断したか。野郎め」
小さく舌打ちする。悪い癖だ。
コンテナの裏で呼吸を整えて敵がいたコンテナを覘く。たまに体の端が見え隠れしているが、攻めてくる様子はない。俺ならすかさず壁沿いに移動して追撃するところだが、彼にはその度胸は持っていないようだ。相手の欠点に助けられた形だが、幸いだ。
タイミングを見計らって、俺は丘の上に向かって駆け出した。コンテナの後ろに体を隠している隙を見計らって飛び出した。遅れて右側から銃声が響く。焦って射撃してきたのだろう、それに反動が強い機関銃だ。そうそう命中するものではない。
いくつか積み上げられた木箱の裏に駆け込むとまた呼吸を整える。そしてしゃがんだまま移動して射撃を開始する。体をだす度に数発の弾丸が俺の周囲の地面を耕していく。どうやらタイミングを合わせて狙っているようだ。
俺は木箱の積み上げられた遮蔽物を利用して、両端から射撃したり立ち上がって射撃したりとバリエーションをくわえて敵の攪乱を試みる。これは穴が3~4つのもぐら叩きのようなものだ。それに機関銃で狙い撃つのではそうそうに当たりはしない。しかし、両方とも至近弾は多いがなかなか命中はしない。至近弾がくると隠れて、様子を見て撃ち返してのくり返し。別に一発や二発で死傷したりはしないが、不思議な緊張感がある。
まるで精神を削るような戦いだと思った。ヘッドショットにでもならない限り絶命はしないのに、この一発の重みはなんだろう。
そう考えている間も銃撃が止むことはない。激しい戦いだ。俺は銃弾のキャッチボールには飽き飽きしていた。おまけに直撃弾も送り込めていない。そこで切り札を使うことにした。
もちろん破片手榴弾だ。これは3発しか携行できない。そのためにこれが最後の一発だ。
俺は顔を出さずに投げると、WA2000に持ち替えてスコープを覘く。そしてグレネードの爆発を眺める。これに触発されて敵が撃ち返そうと体をさらしたら引き金を引くだけ。俺が手榴弾を投げた数を覚えているか、頭の回転が速い敵ならコンテナの反対側から飛び出して、俺がさっき逃げ込んだコンテナを利用して距離を詰めてくるだろう。しかし彼はそうしなかった。
爆発の衝撃が止んだ瞬間に、奴は半身を乗り出してきた。そしてMG3の弾幕を張る。もちろん至近弾が周囲を激しく叩き、木箱を破壊し地面の土を巻き上げていく。異常なまでに恐怖心が掻き立てられるがそれを必死に抑え込みスコープを覘く。そして照準を引き絞っていく。
彼は俺がスナイパーライフルに持ち替えたことに気が付いていないのか、それとも気付いたうえで早く無力化しようとしているのかは定かではないが射撃をやめることはなかった。
クロスバーの中心に頭を捉え、引き金を引こうとした瞬間。肩を激しい痛みが襲う。
まるで丸太にでも叩かれたような衝撃。そして一気に肩が熱を持っていく。焼けるような熱さとともに嫌な汗がにじみ出てくる。これが恐怖だ。生物の本能が隠れろと警告している。
俺は感覚が遠のいていく指先で引き金を引いた。そこで戦いは終了した。
クロスバーは多少ずれて首か顎を打ち抜くことになったが、先ほど破片手榴弾で与えたダメージが蓄積していてくれたおかげだ。なんとかキルできた。
その場に座り込む。肩は覚めたように冷たくなり、傷口をかき回されるような痛みが体中を駆け巡ってはいるが、俺の視線はキルした相手から視線が離せなかった。
無事勝利した俺は、回収用のヘリの迎えを待つだけだった。ボロボロの木箱に背中を預けたまま俺は腰につけていたポーチから消毒液や止血帯、包帯を取り出す。ヘリが迎えに来てくれるまでの辛抱だ。
俺は引きつりながらも、青く澄み渡った空を見上げて。頬笑んだ。
しばらく風の音を聞いて呼吸を整えていると、空から爆音が鳴り始めた。
肩の痛みは和らぎ始めたが、今は全身が痺れているようで力が抜けていく。俺はなかなかいうことを聞いてくれない腕でヘルメットを剥ぎ取り近くの地面に転がす。
『…聞こえるか、よく帰ってきてくれた。その傷じゃ、フルトン回収もできないな。直接ヘリを下ろす』
目の前に巨大な鉄の塊が下りてくる。Mi-24D…ハインドだ。この機体はソ連発の攻撃ヘリでかなり大型であり、武装ヘリ本来の強力な武装で地上を制圧する。それと歩兵を搭乗させ、ヘリボーンを行うという空の歩兵戦闘車のようなものだ。
初めて乗った時の印象は巨大な鉄の棺桶だった。こんな巨大で重たい金属の塊と一緒にあの世行きとは冗談じゃない。しかし、自分が負傷して動けないときに味方として来てくれると、まるで天使が舞い降りたようだ。
「へへ。やっとお迎えか」
全身に回り始めた痺れが、感覚を麻痺させていく。そして瞼までが麻痺し視界がだんだん失われてくる。それでもお迎えの天使を見つめていると、何人かの兵士が降下してくるのが見えた。全員M16を装備し、野戦服に身を包み、周囲を警戒しながら一直線に向かってくる。
そこで視界が白んだと思うと、ブレーカーが落ちるように視界が暗く遠くなっていくのを感じた。
空を見上げてみると、一時間前と何も変わらない空だった。相変わらず雲一つないかもめの鳴き声だけが時の流れを知らせていた。
初めまして、凪です。
初めての投稿で、どんな反応が返ってくるかドキドキわくわくです。
もし読まれた方がいらっしゃったら、どんな感想でも教えていただきたいです。
ではでは、またいずれ…
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