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奈良県生駒市「市民投票条例案」の是非、初裁判に
2012/05/22 17:42更新
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記事本文
■議会議決なし 違法性争点
事実上の外国人への地方参政権容認に道を開くとして批判がある奈良県生駒市の「市民投票条例案」の是非をめぐり、同市の男性が奈良地裁に提訴し、法廷で争われることになった。外部有識者を交え条例案を策定した「市民自治推進会議」について住民監査請求が出され、市の監査事務局は議会の議決なしで、市の自治政策の一翼を担ってきた同会議を地方自治法に違反する組織だと認めたためだ。提訴した男性は法的根拠のない組織への公金支出の是非とともに、同会議や条例案の法的是非も問う構え。全国初のケースとして注目されそうだ。
「推進会議の設置は法律または条例に基づいておらず、違法と判断せざるを得ない」
今月上旬に出された住民監査結果で、生駒市の自治推進施策の一翼を担ってきた「推進会議」が地方自治法に違反することが明確に指摘された。さらに「推進会議の活動は違法になる可能性が高く、適切な措置が講じられるまで活動は停止すべきだ」とも勧告した。
地方自治法は138条4の3項で、自治体が審査会や審議会、調停、審査、諮問、調査などの機関(付属機関)を置く場合には、設置条例を議会に諮って定めるよう義務づけている。しかし、同市では行政機関の内規にあたる要綱で済ませ、議会に諮らずに進めていた。
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記事本文の続き 生駒市では平成21年に「自治基本条例」を制定し、市民投票条例はその関連条例だった。推進会議がそれまでの議論を今年1月にまとめ、18歳以上の永住、定住外国人に投票権を与え、投票結果を尊重するよう市長や議会に課す条例案を答申していた。
住民監査では法的根拠のない違法な組織によって作られた市民投票条例案は無効で、メンバーに支払われた公金支出も返還すべきだとする請求もあったが、監査結果ではこれを退けていた。16日に奈良地裁に提訴した男性はこうした棄却部分についても市と争う構えだ。
生駒市以外にも議会の議決なしで同様の組織を抱える自治体は各地にあるだけに、早急な違法性の解消が求められそうだ。
■根本に「二元代表制」軽視
生駒市の今回の問題は、自治基本条例を制定した全国約200自治体の行政運営にも警鐘を鳴らすものといえる。自治基本条例をめぐり、首長側が議会に諮らずに「検討委員会」「懇談会」「市民会議」などの組織を立ち上げる手法は生駒市だけでなく各地で一般的に取られてきたからだ。(安藤慶太)
外部の有識者に委ねられた基本条例にはこれまでも「国と地方との関係、法や行政秩序を壊しかねない」などという批判があった。
例えば、多くの自治体が基本条例を「最高法規」と規定、他の条例より優位に位置づけ、既存の条例は基本条例と整合を図るよう定めている。だが、条例はどれも対等で特定の条例を優位に位置づけたりはできないというのが国の立場だ。
また条例にある「市民」の定義も「市内に居住するもの」だけでなく「通勤しもしくは通学するもの、及び市内で事業活動やその他の活動を営む個人又は団体」まで拡大。権利と義務、受益と負担のバランスを欠く規定が多く、神奈川県大和市では「市長及び市議会は…(在日米軍の)厚木基地の移転が実現するように努めるものとする」と市長や議会の議論を一定の方向に縛るかのような規定もみられる。
これまでの住民監査で青森市や大阪府豊中市、神奈川県逗子市などで行政運営の違法性が指摘。青森市ではこの結果、自治基本条例そのものが流れた。逗子市は係争となっている。福岡県若宮町(現宮若市)も係争となり、裁判で行政側が敗訴している。
いずれも地方自治法138条4の3項の規定に反すると判断されたものだ。首長部局の独断的な政策立案を二元代表制のもう一つの核である議会が検証するように定めた同項の規定に基づき、部外者に政策の一翼を委ねる以上、議会の議決が不可欠と判断したといえる。今回の裁判では公金支出や市民投票条例案の法的是非に加えて、自治基本条例をめぐる行政手法も根本から問われそうだ。
■「外国人地方参政権に道」批判
生駒市では平成15年10月から自治基本条例を制定する動きが始まった。21年6月に成立した同条例は市政運営の基本理念や市民、議会、行政の「協働によるまちづくり」の基本ルールを定め、市の条例の頂点に立つ「最高規範」「自治体の憲法」と位置づけられている。
推進会議は基本条例の趣旨や目的などの周知や、基本条例の適正な進行管理、企画立案などを行う組織として21年8月に発足。条例に詳しい大学教授を中心に10人のメンバーからなり、基本条例をめぐる市の施策の事実上の司令塔として機能していた。
今回、問題となっている市民投票条例案は基本条例にあった市民投票条項に基づき、具体的な取り決めを細かく定めたものだ。市民投票権を永住外国人にも与える方向での議論が進められていることが明るみに出ると、事実上、外国人に地方参政権を付与するものだとして批判を浴びた。
推進会議は今年1月にそれまでの議論をまとめた「市民投票条例案」を市長に答申したが、住民監査後は活動を休止している。
■山下市長 当時最年少37歳で当選
自治基本条例や市民投票条例などの推進役である山下真市長(43)は朝日新聞出身。同社を退社後、弁護士に転身し平成18年の市長選に出馬。不利とされた選挙情勢で4選を目指す現職市長に挑み、ダブルスコアで市長に当選した。37歳での市長当選は当時最年少だった。
推進会議では21年9月の初会合に姿を見せ「条例の周知や条例を実効性のあるものにするために、ご尽力をいただきたい」とあいさつ。会議のメンバーに辞令を交付した。
市民投票の投票権を外国人に与えることに市民らから多数の反対意見が寄せられた市民投票条例案について、山下市長は「国の地方制度調査会での住民投票の法制化の議論を待ち、議会に提案したい」と慎重姿勢を見せる一方で、依然、条例制定には意欲を見せていた。
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