海を越える競技かるた「クルンテープかるた会」

  茶道、生花、武道など、外国人を魅了する日本の伝統文化は数あるが「競技かるた」もタイをはじめ世界へ広がり始めている。競技かるたは、一対一で百人一首を各々自陣に25枚ずつ並べ、上の句が読まれ下の句が書かれた札を取り合うルールで先に自陣の札を無くすと勝ちとなる。 

 

バンコクで8年前に設立された「クルンテープかるた会」は、毎週日曜日に競技かるたの練習を行っており、日本人だけでなくタイ人も参加している。 

 

百人一首で一番好きな歌は「花の色は うつりにけりな いたづらに 我が身世にふる ながめせしまに(小野小町)」と流暢な日本語で話すタイ人のミューさんは、チュラロンコン大学の3年生。ミューさんが、競技かるたを始めたのは、ちょうど1年前で、きっかけは「ちはやふる」という競技かるたを題材にした漫画を見てからという。「ちはやふる」は、競技かるたに打ち込む少女を描いた漫画でアニメ化され人気を博している。ミューさんの様に「ちはやふる」の影響で競技かるたを始めたという若者は多い。 

 

「かるたは頭も体も使うのが楽しくて、札を飛ばすところが格好いい」と楽しそうに話すミューさん。神経を研ぎ澄ませ素早く札を取る動作は、武道に通ずる凛とした美しさ迫力があり確かに格好いい。 

 

クルンテープかるた会の練習を見学させてもらったが、練習といえども真剣勝負。坂東真由美会長が上の句を読み始めると、写真を撮るのも躊躇する程の緊張感、集中力が競技者から伝わってくる。楽しみながら集中力・記憶力・瞬発力を鍛えられる競技かるたが、子供の教育ツールとしても注目が高まっているのは理解できる。またスクリーンではなく、生身の人間と向き合い、勝負の駆け引きを学べるのも良い。 

 

高校3年生のミミーさんは、競技かるたを始めて5年目。「かるたを通じて多くの日本人や日本の文化と接する事ができるのが楽しい」という。ミミーさんは「ちはやふる」で人気が出る前からやっている。きっかけは中学で日本語の勉強を始めた時、学校のクラブ活動として競技かるたと出会い、日本語の勉強に役立つと思い始めたそうだ。「だんだん自分が強くなっていくのがわかるのがうれしい。でもやればやるほど難しいです」というミミーさんは初段の資格を持っているが、日本人以外の有段者は5人しかいないというからすごい。ちなみにタイ人初の有段者はアナン・ペーンソンブーンさんで、現在はアユタヤで日本語・英語塾を開き、中高校生に竸技かるたの指導も行っている。 

 

全日本かるた協会では、通常四段以上でA級となり名人戦・選手権・選抜大会などのタイトル大会への参加資格を与えられるが、ミミーさんはきっとA級選手になってくれるものと大口堂遊副会長も期待している。 

 

ミミーさんの好きな歌は「み吉野の 山の秋風 さ夜更けて ふるさと寒く 衣うつなり(参議雅経)」で、理由を聞くと「よく取れるから自分の札という気がする」と笑った。 昨年9月、競技かるた初の国際大会「第1回小倉百人一首国際交流かるた大会2012in 福岡」が行われタイ代表としてミューさん、ミミーさんも参加。国際といっても参加国はまだ5カ国であったが、タイチームは見事優勝を飾った。今後も2回、3回大会と回を重ねて行く予定だ。 

 

競技かるたは、世界への普及という大きな海原へ船出したばかり。千年の年月を越えた百人一首の歌が、今度は海を越える。     

 

(編集部H)・・・・・・・・・・・・・「競技かるたは、老若男女を問わずに誰でも楽しめ、やればやるほど魅力を感じる競技です。お気軽にお問い合わせください」と「クルンテープかるた会」のイーブン美奈子副会長。毎週日曜日午後1時からBTSアソーク駅、地下鉄スクムビット駅直通のインターチェンジ21ビルL階のパーソネルコンサルタント社セミナールームで練習しています。